見出し画像

激動を生き抜く!これから地方公務員が考えるべきこと:改善への姿勢とプロセスを見せることが信頼を生む

 PDCAサイクル、という言葉が政策運営のポイントと言われます。事業を計画し(Plan)、それを実行したら(Do)、成果の検証によって課題を明らかにして(Check)、改善する(Action)。そして、改善した内容が次の計画に反映される(Plan)という形で、繰り返されていく。これがPDCAサイクルの簡単な説明です。

 この考え方は、私が職員であった1990年代後半から2000年代初頭にかけて、アメリカから入ってきました。日本では予算の獲得が最も重要で、その後は実行するのみ(予算を「消化する」と言います)、という考え方が根強く(今もそうなのですが・・・)、政策の質の向上が遅々として進みませんでした。そこで考え方を大きく変え、結果(成果)を重視する形とし、検証と改善をしっかり行うことで、政策の質が向上するという期待がありました。

 さらに、説明責任も重視されたので、住民などステークホルダーへの透明性を重視して、PDCAサイクルの内容が公開されています。自治体が行う事業の数は非常に多く、数百から千という膨大な規模になるので、シンプルな共通様式に内容を書き込む形になっています。公開することで市民のチェックも受けられるのですが、第三者機関を設置して専門的にチェックするケースもあります。

 私は、地方公務員時代にこのPDCAサイクル構築の担当者となり、また、教員時代には第三者機関のメンバーとして関わってきました。このようにPDCAサイクルには縁が深いのですが、改善に対する姿勢や考え方に違和感を覚えてきました。特に、民間企業における改善と大きく異なる点があると感じていて、それが信頼の獲得に決定的な違いをもたらしていると思いますので、今回はそのことを述べたいと思います。

 民間企業における改善は、お客さんへの信頼獲得に貢献しています。特にモノでは分かりやすいです。例えば、毎年新製品が発売されるスマートフォンでは、「性能〇〇%アップ」など改善点がウリになります。ホームページやカタログでも、この謳い文句が大きな文字で強調されています。今使っているモノよりも使い勝手が良い、という認識を与えて買い替えを促すわけです。

 これに対して、自治体の事業PDCAサイクルでは、改善点が明確になっていません。これには2つの理由があるように思います。第1に、改善点を示すと市民から批判されるのではないか、という認識が地方公務員にあるためです。税金を使う事業なので、ムダは許されません。改善点とは、以前の税金の使い方に対する問題点をとなるので、いくら検証して問題を解決したとしても、問題のある使い方をしたことを自ら明らかにするのはムダがあったこもを告白するようなものだ、と考えてためらってしまうのではないかと思います。

 第2に、改善した内容が「取るに足りない」と思っているからです。民間企業が造るモノでも、実は改善点は使ってみると対して重要なでない場合も結構あります。家電量販店に行って定員さんに「どれが良いですか?」と聞いても、「そんなに変わりませんよ」と言われて、結局、第一印象で選ぶ、といった経験があると思います。それでも「性能〇〇%アップ」と宣伝するのは、改善を重ねてきたことが商品への信頼や魅力に繋がると考えているからだと思います。いくらそれほど違いはなくても「前と同じ商品!」と書いてあったら買いたいとは思いません。

 もちろん、地方自治体でも目に見えない改善は行われていると思います。コピーの枚数を減らした、余計な会議をやめた、など・・・おそらく枚挙に暇がないほどあることでしょう。それでも、「こんなものは改善と言えるのだろうか」「わざわざ書くことだろうか」と、マジメな気質!もあって、書けずにいる、という側面もあると思います。

 しかし、私は、地方自治体も日頃の小さな改善の積み重ねが、市民からの信頼を高めると考えます問題点があったら隠すよりも、臆することなく示して改善のアピールに使った方が、長い目で見れば良いことづくめのように思います。PDCAサイクルは、すでに日本に入ってきてから20年ほど経過し、ほとんどの自治体が(国も)取り入れています。それでも、予算が重視される状況は変わっていませんし、真のPDCAサイクルの確立は道半ばと言えます。

 この時期は、ちょうど前年度の決算がまとまりり、来年度の予算の準備にとりかかる時期です。今年度も前半が終わりを迎えます。まさに検証が活かせる絶好のチャンスと言える時期です。しっかり検証を行うことで、政策の質と市民の信頼向上に結びつけてほしいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?