フレンチトーストに教えられたこと【朝ごはん日記】
二兎を追う者は一兎をも得ず。
古来より語り継がれることわざは、うんざりするほど耳にしてきた。
うさぎを二羽捕まえようと追いかけたら、いずれも逃すぞ、欲張るな。
なんてことは小学生でも理解しているだろう。
ところが令和の現代、件のことわざは通用しなくなっている。
テクノロジーの発達は、生産性を大きく向上。
人々は、余暇をたっぷり手に入れた。
さらに情報の普及が、人類に知恵とスキルをもたらす。
結果、兎を三、四羽と手にする人々が誕生。
芥川賞のあの人は、会社員の傍ら執筆活動をしている。
医学部に所属しながら、弁護士免許を取得した猛者が登場。
日本屈指の学歴を誇る大学へ通いながら、芸能活動を続けるアイドルは珍しくない。
そんな世の中を見ていると、しばしば思うもの。
「望めば、なんだって手に入る」
気づけばつい欲張っている自分に気づき、反省する。
なのにまた過ちをくり返してしまう。
この度わたしはまた欲張って、失態をおかしたことを告白しよう。
フレンチトースト作りにおいて。
先週末、めったにいかない街のカフェへ出向いた。
看板猫がかわいらしい、小さな小さなお店。
猫さまの接待を堪能し、大満足の週末であった。
すっかり上機嫌のわたしは、カウンターに並んだあるものを購入。
名をば「猫ちゃん食パン」だ。
後日。朝食にと思っていたところで、ふとひらめいた。
フレンチトーストにしよう、と。
実は例のカフェへ行ったあと、友だちとファミレスを訪れていた。
デザートにと友達の一人が頼んだフレンチトーストがあまりにもおいしそうだったのである。
数日たっても頭から離れないほどに。
こうなりゃ、作るしかない。
幸いこちらには、心強い味方がいる。
そう、「猫ちゃん食パン」
卵液を染みこませて焼けば、なんとも愛らしい猫ちゃんフレンチトーストに仕上がるだろう。
新年度を機に始めると決めていたあらたなマガジン「朝ごはん日記」。
記念すべき初稿の幕開けにふさわしい。
はやる想いでレシピを検索。
お手軽レシピをお料理チャンネルに教えてもらい実践した。
卵液をじっくり浸すために、一度レンチンするとよいらしい。
タッパーに猫パンを入れ、レンジへ。
二分後、取り出したそれを見て唖然。
卵液がじっくりと染み込みすぎたあまり、猫ちゃんは影も形もなくなっているではないか。
こんな筈じゃない、やり直したい。
とはいえ、少し冷静に考えれば、水分を吸った食パンが膨らむことくらいわかったはずである。
完全に、先を見据える力が足りなかった。
ご利用は、計画的に。
某cmのフレーズが脳裏をかすめる。
猫ちゃんのかわいさと、フレンチトーストのおいしさ。
欲張って二兎得ようとしたら、まさかこんな結末になろうとは。
唯一の救いは、申し分のないおいしさだったことだ。
見た目は大失敗、でもフレンチトーストとしては大成功。
一兎を得られただけでも感謝である。
新しいに溢れた春が今年も到来した。
何かをスタートさせるのにぴったりな季節。
つい肩に力が入って、あれもこれもと手を出したくなるものだ。
されど、欲張ってはいけない。
不器用なわたしは、二兎を追わない方がいいみたいだ。
跡形もなくなってしまったフレンチトーストに教えられるとは。
ひとつずつ、着実にこなしていこう。
よければお願いします(^.^)いただいたサポートはnoteの軍資金(本/ほかの方のnote/おいしいもの)に活用します!