見出し画像

なんちゃって鳥居研究

神社の鳥居をくぐると、自然と心が落ち着いて静謐な気持ちになる。

……なんてことは、正直サジ加減ってやつだと思いますが(あんまりそういうの感じないほう)、旅行カバンには必ず御朱印帳を入れていくし、神社のご由緒書はじっくり読むし、勢いで神社検定受けちゃうくらいには神社好きなわたしにとって、神域の境を示す神社のシンボル、鳥居はもともと親しみがあり、同時に興味深い存在です。

ある時「鳥居大図鑑」を読んでましたら、図解のイラストと説明文が合ってなかったり、写真と矛盾してたり、なにより誤字があまりに気になって……なんと出版社に勝手に赤字を送ってしまいました。

THE 職業病。

▲送った赤字の一部。書店売りの書籍としてこれはちょっと泣いちゃう

とにかく鳥居の種類に興味がわきまくってるのですが、信頼できてわかりやすい資料がなかなかなく。

気付いたらイラストレーター立ち上げて、ベジェ曲線と格闘してました。

え、意外と描ける……!楽しい……!

鳥居の種類が気になる

実は、鳥居の専門書は存在します。根岸縈隆先生の「鳥居の研究」(河出書房新社 )。これを読まずに、鳥居の研究してるなんて言えません。

ただ、この手の学術書ってなにしろお高くて、ちょっと手が出ない……。ということで、根岸式を参考にされているという某ブログを、さらに参考にさせていただきました。ありがたや。

根岸先生は鳥居の形状や塗りなどによって相当細かく分類されていたようです。ただ、わたしの目的は「街で見かける神社の鳥居が何鳥居か見分けられるようになること」(何のために笑)なので、とりあえずスタンダードな2系統をベースに、派生形を見分けるポイントをまとめてみました。

パーツ名が気になる

系統の前に、鳥居を構成するパーツやデザインに一つ一つ名前がついているので、興味をお持ちの方はこちらからご覧ください。

類似画像いろいろ見たけどこの絵はかなり詳しい!

和風建築の用語はいちいち趣がありますね。特に、笠木や島木の両端を斜めに切り落とす「襷墨(たすきずみ)」って、語源が想像できるようでできなくて、職人の世界の符丁みたいでかっこいい。

これらの細かい建築様式によって、大きく2つ、小さくは無限に(!)、鳥居の種類があるのです。

系統1:神明系鳥居

神明系の鳥居は、垂直の縦棒2本+水平の横棒2本で構成されている、非常にシンプルな形の鳥居です。神社を表す地図記号もこの造形ですね。天照大神を祀る神社に多く、神宮内宮の宇治橋に立っている鳥居も神明鳥居です。

見分け方は、笠木や島木(一番上の横棒)が水平=反り増しがないこと。基本的には図の左上から右下に進むにつれて意匠性が高くなります(例:靖國鳥居の一部が変化→鹿島鳥居/春日鳥居の一部が変化→八幡鳥居)。

この中で特に珍しいのは、神明系なのに柱の転び(ハの字に広がっている)がある宗忠鳥居。額束もついていて、かなり個性的です。

それから春日鳥居という系統がありますが、奈良の春日大社はこの春日鳥居ではありません。「荒川区に荒川は流れていない(※事実)」みたいな感じ。春日鳥居はかなりレアタイプで、三田の春日神社で確認されているようです。

右下の2種のように(1)笠木の下に島木があって、(2)反り増しがない という鳥居を見つけたら、結構レアだと思って良いです。

系統2:明神系鳥居

現在街で見かける鳥居のほとんどは明神系鳥居です。塗りがあれば京形明神鳥居、白木や石づくりなら明神鳥居と呼ばれます。見分け方は、笠木と島木がゆるやかにカーブしている=反り増しがあること。神明系に比べて装飾的で、種類も多彩です。柱の転びや反り増しは、下から見上げた時により大きく見えるようにという工夫だとか。ほんと、昔の人は細かいところまで気が回るなぁ……

明神系は上図以外にも派生形が多く、まさに無限に広がっているといえます。ただ、鳥居の建築様式は宗旨と関わるため、地域差もあります。八幡信仰や稲荷信仰は全国的に広がっているので、八幡鳥居や稲荷鳥居が多いのはまぁ納得。柱が角形の住吉鳥居や額束のない宇佐鳥居などは、関東ではお目にかかることが少なそうです。

バリエーションが豊富な分、判別しにくいものもあり、調べ始めるとかなりマニアックな領域に。例えば、京形明神鳥居と後期型八幡鳥居の違いなんて、ほぼ誤差かと。

わたしは一体、何の教科書作ってるんでしょう。

特殊系の御三家

今回、自分のメモ的に作った分類表には、明らかに見分けられる特徴的な鳥居は省略しました。が、鳥居の種類を語るならやっぱり特殊系は外せません。中でも割とメジャーな御三家をフリー素材でご紹介。

両部鳥居(広島県・厳島神社)

山王鳥居(東京都・日枝神社)

三輪鳥居(東京都・牛島神社)

練習問題

では、練習問題です。次の鳥居は何鳥居に分類されるでしょうか。

問1:北海道神宮

(こたえと見分け方)

(1)反り増しがない → 神明系

(2)貫が角形 → 靖國鳥居!

問2:福徳稲荷神社

(こたえと見分け方)

(1)反り増しがある → 明神系 

(2)台輪がある(3)塗りがある → 稲荷鳥居!

問3:出雲大社

(こたえと見分け方)

(1)反り増しがある → 明神系 

(2)塗り、台輪はない → 明神鳥居!(転びは微妙だけど)


ここまで書いてきて、もう本当に鳥居の世界って底知れないと思いました。角度が微妙でどちらともつかないものとか。あくまでも自分で調べて分けてみた結果なので、専門書の解説とは異なる部分があるかもしれませんのであしからず。

最後に、特殊系の中でも特に異彩を放つ現代鳥居をご紹介します。

東京都・烏森神社

既成のイメージを見事に打ちこわし、モダンに振り切ったデザイン鳥居。郡菊夫さんという建築家の作品だそうです。きゅっとくびれてまた上に伸びるフォルムは社殿とも統一していて、すごくいかしてます。新橋にありますので、お近くにお立ち寄りの際はぜひ。

結局なんでもありなのかよ!鳥居業界、ダイバーシティ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?