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vol.21新人マネージャーとCM

問い合わせ

まだまだ寒さ厳しい2月。新人マネージャー畠山の携帯の電話が鳴った。以前CMの問い合わせがあったが、仕事につながらなかったT社からだ。つながりはしなかったが、資料を渡しに営業に伺ったことを、覚えていてくれたのだ。

「化粧品会社のCMで女性ナレーターを探しているのですが、ご提案頂けませんか?明後日までに」

CMは何件も問い合わせを受けていたが、なかなか簡単には決まらない。キャスティングのために数多のサンプルを聞き尽くし、候補者のスケジュールを抑え、またバラす連絡をする。手間暇とかなりの集中力のいる仕事。そのうえいつでも急なのだ。今度こそという気持ちと、またダメかもという気持ちが入り混じる。

畠山「どんな内容になるんですか?」
『......を飾るプロジェクトに......彼女に憧れた女性の想いが伝わるような...』

...え!!心臓が高鳴りバクバクする。

畠「ナ、ナレーションはどういったイ、イメージでしょうか?」
『監督からは女性の役者方向で探したいとお願いがあったのですが...』
畠「承知しました。ではピックアップして候補出してみます」

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キャスティング

畠「役者っぽい感じかぁ...」
役者が経験あるの人のサンプルを全て聞いてみた。
”ナチュラルで力のある声””客観的な喋り方”
しかしなかなかピンとこない。果たしてどの声が合うのか、イメージができなかったのだ。

「もっと視野を広げてみたら。役者方向っていうのは監督のイメージの一つでしょ、他の角度からも検討して、そのイメージの本質を掴むの」苦悶の様子を見かねたのか、狩野社長から一言

どうしてもこの仕事を取りたい。その気持ちがから回りしていた。問い合わせの会話をもう一度思い出してみる。

『彼女に憧れた女性の想いが伝わる』

そこから声のイメージを再構築してみる。次第にイメージにフォーカスがあって来た。悩みに悩んだ末、3名の候補を提出。
”ナチュラルで力のある声””客観的で媚びない声””カッコよくて可愛らしく繊細な声”

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決定まで


候補を出してから3週間が過ぎ、収録日もいよいよ迫って来たが...音沙汰が無い。CMの最終決定には時間がかかる。各方面の了承を得るためだ。それにしてもあまりにギリギリだ。

スケジュールはそこまでキープしたまま。「またダメだったのかなぁ...」諦め半分で確認の電話をする。

畠「もしもし猪鹿蝶の...」
『畠山さん!ちょうど連絡しようと思っていました。実は最終候補に残っています。これからクライアントが最終決定しますので、もう少しだけお待ちください!』

最終候補に残っている!問い合わの時以上に心臓がバクンバクンと鼓動する。

『今回、桑原礼佳さんで決定しました!』
普段はスポーツやバラエティの番組で活躍するナレーターだった。全身から力が抜け喜びが一気に駆け抜けた。
「ありがとうございます!!」

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そのCMとは

KOSEのCM
安室奈美恵の引退までのフィナーレを飾るプロジェクト『NAMIE AMURO×KOSÉ ALL TIME BEST Project』だ。時代のトップを走り続け、スーパースターでい続けた彼女。その軌跡を時代と共に追った映像作品。彼女に憧れた女性たちの想いを代弁するものだった。

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CMの収録

ナレーション録りの日がやって来た。MA室に入り監督に挨拶し打ち合わせを。

キューランプが点灯する。
映像と音声が交わった瞬間、鳥肌がたった。
監督の受けもいい。しかしここからが本番だ。

テレビとCMの現場は大きく違う。テレビ番組は滑舌が滑った時や尺をこぼした時、そこを録り直すのだが。。。CMの現場は同じフレーズを何パターンも録る。今回の現場でも一つのフレーズに30-40テイクも。

慣れていないとテイクが多くて、自分の読みが合っているのかドンドン不安に駆られてしまう。しかし彼女は焦ることなく着実に一つ一つ要望に答えて行く。そしてついにOKが出た。

その後、クライアント試写。この時の試写は2時間位かかった。結果少し修正が出て、2-3テイクの取り直し。ようやくCMの収録が終わった。

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仕事の終わりに

帰りの道中で心の中を聞いてみた。
桑原「最初お話を聞いた時、誰もがやりたいCMだなーって。私も安室さん時代のど真ん中にいました。だけどCMって期待しすぎちゃうとショック大きいですよね。今まで候補には幾度かあったけど決まらなっくて。あえてまったく期待しないようにしてました。で、今回初めてのCMでした」

「映像を見たとき、これは私の得意分野!という思いと、こんなかっこいい作品に私で大丈夫だろうか…?という戸惑いが入り混じっちゃって」

「OA見るより先に、友人や家族が歓喜して連絡をくれて、自分が感動するタイミングを逃しちゃったんです。感謝と愛のつまった素敵なCMで、原稿を読みながら本当に幸せでした」

安室奈美恵と共に歩み、フィナーレを飾る言葉を彼女が持った。
”カッコよくて可愛らしく繊細な声”それこそ安室奈美恵が持っているものだ。
そこに憧れ目指した女性を代表する声が桑原礼佳となった。

KOSE 安室奈美恵「みんな、あなたになりたかった。」

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