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vol.14”日本”をどう読むか問題

ニホンか。ニッポンか。「日本」をどう読むか。

「どっちが正解か悩む言葉」の代表。それが「日本」。

テレビで「ニホン新記録を引っさげ、今世界へ!頑張れニッポン!」などと煽っていたりするような気もするし、その混在ぶりたるや、もはや国号とは思えないほどであります。

ニホンか、ニッポンか、どないやねん!

ナレーションの現場でも時々混乱することがあり、ディレクターの好みで決まったりします。「VTR中の人がこう読んでいるので合わせたい」「昼ニュースに合わせます」などの回答が返ってくることも度々です。各ディレクターの判断基準が曖昧なままだったりします。

さて、ナレーターは、いかにすべきか。

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NHKは「国号としてはニッポン、他は必要に応じて」

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まずNHKの見解はどうでしょう?
さすが公共放送、なんと昭和9年の段階ですでに議論が起こっています。

「放送用語並発音改善調査委員会」なる組織を以ってして

▼正式な国号として使う場合は、『ニッポン』
▼そのほかの場合には『ニホン』と言ってもよい

と言う統一見解を発表したのであります。

ちなみにNHKが上記の見解を発表した1週間後に、文部省臨時国語調査会という組織が「国号としての「日本」の読み方を「ニッポン」とする」旨を出したそうですが、法制化には至っておりません。

お札にも「NIPPON」と書かれてますよね。しかしその後も議論は続きます。

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近年の閣議では「そもそも統一する必要がない」

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そして、遡ることおよそ10年の2009年麻生内閣時代。民主党岩國哲人議員が「日本国号に関する質問主意書」として、呼び方の統一案を提示。

閣議答弁は

▼『にっぽん』又は『にほん』という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない

要するに「本来もこれからも、まあどっちでも良い」ということなのです。
うーん、楽になったような、余計迷うような^^;

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ナレーションの現場での傾向と対策

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「VTRの中の人が使った」や「昼のニュース」に合わせるなどの曖昧な基準で使われてしまう「日本」。そこで参考にしたいのは、スポーツの現場で、採用されることが多くなりつつある傾向です。

【国外に関わることはニッポン】VS【国内だけのことはニホン】

▼国外が関わる
 「ニッポン代表として」
 「ニッポンのお家芸が」
▼国内だけ
 「ゼンニホンバレーボール高等学校選手権大会」
 「ニホン人選手の最高記録」


2020年の東京オリンピックを控えて「ニッポン」が増える傾向にあるのではないかと予想されます。今後一層、スポーツから放送全体に波及して行くかもしれません。

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固有名詞などの事例

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上記の傾向を踏まえながらも、プロのナレーターとして見落としていけないのは「固有名詞」です。これだけは決まってますので、ディレクターの指示があっても、強く提案したり当事者に確認してもらうようにしましょう。

2005年初刷の「NHKことばのハンドブック」を参考にしつつ、具体例をあげます。

▼【ニホン】
日本画/日本海/日本髪/日本共産党/日本航空 /日本サッカー協会/日本史/日本相撲協会/日本大学/日本脳炎/日本橋(東京)/日本風/日本料理/東(西)日本/日本ラグビー協会/日本レスリング協会/日本レコード大賞/
▼【ニッポン】
日本維新の会/日本記者クラブ/(国号)日本国/日本国民/日本橋(大阪)/日本体育大学/日本武道館 /日本放送協会/新党日本/日本郵便
▼【ニホンまたはニッポン】
日本一/日本記録/日本犬/日本語/日本三景/日本時間/日本製/日本男子/日本刀/日本晴れ/全日本/
▼【ニホンを第1としニッポンを第2とする】
日本アルプス


企業名や地名など固有名詞については、当然のことながら固有の読み方があります。(同表記の日本橋は、東京はニホンバシ、大阪はニッポンバシ。読み方によって場所が変わってしまいます)

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