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vol.20アンカーナレーター鼎談 報道ナレーションの準備

夜の報道ナレーターたちにインタビュー

ナレーター目線の質問を、猪鹿蝶の帯ナレーターたち「ユアタイム」目黒泉と相原嵩明、さらに「ニュース23」加藤有生子の3人にぶつけます。

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イ「ナレーターは不定期な仕事だし、皆さんお忙しいと思うのですが、ざっくり”夜帯ナレーターの生態”みたいなものを教えてもらえますか?」

目黒:「私は毎朝8時くらいに起きます。朝ニュースを各局見てネタをチェック。他番組の収録がある時は収録に向かい、無い日は営業活動や事務作業、録画したものを見返すリサーチ。テレビはつけっぱなしで、できるだけニュースを耳にするようにしていますね。
そして20時半にはお台場フジテレビに到着して、21時すぎくらいから収録が始まるという感じですね。」

相原:「なんでもキチンとしてる目黒さんと並んでインタビューされるの、困るなぁ^^;ちなみに僕は仕事にあわせて起きるので不定期です。時々ですけどユアタイムだけの日があれば……バッチリ昼すぎまで寝とります(きっぱり)」

目黒:「深夜に(ナレーター仲間の)トビー上原さんたちと飲みに行ったりしてるからだよ(笑)」

相原:「他の仕事がある日、例えばフジテレビ「ネイキッド・イブ」のナレ録りは午前中が多いのでもちろん早起きしますよ。さらにアテレコがある日、これは加藤さんも同じだと思うんですけど‥‥洋画吹き替えは「アサジュー(朝10時)」がほとんどなので……」

加藤:「ですね、私はアテレコがある日は朝6時起きです。台本チェックや口パク合わせの練習など必要なので。」

相原:「ああ加藤さんもちゃんとしてるなぁ…僕はアテレコがあってもそこまで早く起きません(きっぱり)」 

加藤: 「(棒読みで)相原くんは感性がいいからですよー」

相原:「研究や練習をしてない訳じゃないですよ!別のときにしてるだけ!」

加藤:「アテレコはだいたい15時くらいに収録が終わりますので、私はそこから別のナレーション現場に行ったり、何もなければ、家に帰ってご飯作ったり仮眠したり。」

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イ「報道って、聞きなれない言葉や難しい文章が多くてチェックしまくりたいところなのに……仕事が重なり時間ない日は”気合いで一発本番”って感じですか?」

相原:「僕はスマホでも見れるニュースサイトを参考にするなどしています。動画と一緒にナレーション台本も文章で表示されているので、初めての言葉や人名などのイントネーションもざっと把握しておけますから。テレビだと局によって違うところや、局内でも統一してなかったりしますので。」

加藤:「ブースの待ち時間にバババってやるんだよね^^」

イ「少ない時間にも工夫して準備しておけるってことですね。そこで変な質問かもしれませんが…報道って聞くだけで「緊急ニュースが来たら対応しなきゃ」とか思ってたのですが……」

相原:「僕もそう思ってたんですけど、よく考えたら、「超ド緊急」みたいな場面は、実はほとんどナレーションないんですよね。速報ならまだ映像準備できてないので。」

加藤:「”現場からの中継”がメインになるもんね。」

目黒:「実際私も生読みしなきゃいけない場面が数回あったんですけど……最初はそれこそインカムからたくさんの声が入り混じって聞こえて戸惑いましたけど、「TKさんの声と入りのきっかけだけ捕まえられればいいんだな」とわかってからは、なんとかなるもんだな、と思っています。でも、実際は想像してた現場の感じとちょっと違いますね。怒号飛び交う中、走り回ってるイメージでしたが。」

目黒:「局やチーム、文化などにもよるとは思いますけど…ユアタイムは思ったより皆さん穏やかでピリピリしてないですね」

加藤:「私の場合、自分が見えてるところだけかもしれないけど、ADはよく走ってますね^^;バーンってブースに原稿持ってきてくれるので、その勢いで私もバーンと読む!」

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イ:「現場に入ってからはどんな風なんでしょう?」

目黒:「ユアタイムは21時ごろですね。まず「番組進行表」をみて、自分の担当分を理解します。あとは一つ読んでは控え室に戻りまた呼ばれるという流れ。22時くらいまでそういう感じ。」

相原:「だいたい最初に”企画もの”を読みます。それから”いわゆるニュース”を。オンエア中には担当分はだいたい読み終わってるので、控え室でオンエアを見ます。スタッフといろいろ話しながら。」

目黒:「終わったら(終電がないので)局のハイヤーで相原くんと一緒に帰ります。スタッフと飲んだりしない場合は私はシャーっと帰る日が多いです。」

相原:「僕も毎晩飲んでる訳じゃないから!」
加藤:「私はオンエア終わりがギリギリ終電に間に合うので、終電に向かって走ることが多いです^^; てゆうか相原くんは自分の人生を満喫してていいなぁ……」

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イ「報道を目指す新人のために、プロの現場の息吹を伝えてもらえますか?」

目黒:「私、このインタビューのためにある資料を作ってきたんですよジャーン!「ある1日の各局夜報道全コーナー一覧表」です。ただコーナーの目次を書き出してみたただけですけど、いざ作ってみると、改めて各局のカラーや方向性みたいなものを感じました。

同じニュースを各局でやってるイメージがありましたけど、こうやっていざ比べてみると、それぞれ全然違うのですね。読者の方もお時間ある方はやってみると発見があるかもしれません^^;

下記はあくまで私の感覚ですが」

●NHKは「ニュースチェック11」は「ここまでは国際ですよ、はい経済に行きます」と言う感じで、分かりやすい進行が特徴のように感じました
●日テレZEROは、情報量が豊富で、コーナーの数や内容のジャンルもダントツで多かった。
●TBSニュース23は一つ一つのVTRが長く、より映像で丁寧に伝えようとしてる感じがします。
●フジのユアタイムは、スタジオトークが多めでライブ感が伝わります。そして特集コーナーには「ゲノム編集」や「LGBT問題」など、ユニークなものが多いように感じました。

目黒:「こうした見方がボイスサンプル作りなどで、何か生かせれば。」

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相原:「そうやって資料作ったりするとこ、目黒さんはほんと情熱がすごいですね〜(しみじみ)
僕からは簡単なアドバイスですが…「報道は横書きの原稿」が多いとかかな。理由は報道のナレ原は「ナレーター用に作ったもの」ではなくて、映像スタッフたちと共用のものを使ってるからかもしれませんね。」

相原:「ですから原稿の句読点が「目で見てわかりやすい場所に」入ってます。それを、耳で聞いた時にわかりやすい句読点に、自分で打ち直す作業が大切です。」

相原:「また、文章の改行などもバラバラに入っていたりします。シーン変わりなのにカット割りの罫線がない場合も多いです。」

相原:「原稿を見て「シーン変わりするだろう」という風に、事前に意味を把握して自分で記号を入れておく、など。」

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加藤:「というのも、特集コーナー以外は、タイムコードがない場合が多いからだと思います。BGMも映像もほぼないと思っていた方がいい。黒味のモニターに向かって、ざっくり書かれてるカット割りを想像しながら読む感じです。Qランプもない場合が多いですから、ボイスサンプル収録に近いかなぁ。ちなみに報道の忙しい現場ではミキサーや担当Dがいない場合も多いです。そんな時はADが録音ボタンを押してくれるんですが…」

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イ:「読み仮名や、人名」なども、読み間違いなど自分でちゃんと管理しないと、そのままオンエアに乗ってしまうことも……^^;

目黒:「自分の番組の経験しかありませんが、私がちょっと驚いたのは「同じニュースのVTRを3人くらいのDが別々に作ってることもある」なんです。」

目黒:出来上がりのタイミングがそれぞれなので、同じVTRを、まず最初に真ん中部分を読んで、ブース外で待って、締め部分を読んで、そのあと冒頭部分を読んで。また待ってたら、締め部分の直しがあって、という流れでした。」

目黒:読み手として内容もよくわかってなかったりしてますが(笑)スタッフを信じて読んでいくんです。」

相原:「ボイスオーバー(吹替)も映像ないことが多いですよね。原稿には「40歳代で。12秒間」という風に、ざっくり年齢とタイムだけ書いてある感じです。僕は逆に、映像があると役作りにとらわれちゃうので、むしろ映像ない方が自由に表現できてやりやすいんですが。」

加藤:「あとは……ナレーター目線だと「アクセント」ですね。日常の言葉はもちろん、専門用語などもよく出てきますので。私はネットニュースなどで事前に聞いておいたり、さらっとスタッフに聞いたりしますが、あまり捉われないようにしています。」

相原:「いろんな現場があるけれども、近年の制作は、たとえ報道やドキュメントの現場であっても、アクセントだけに縛られるのではなく豊かな表現を目指すというところが増えています。実際僕が関わる現場では「わかればそれでいいから、そこじゃなくて良い表現をしてね」という柔軟な人が多いです。」

目黒:「新人ナレーターにとって、アクセントへの恐怖が、気負いすぎちゃって、つまずく原因になりがちですもんね。アクセントが辞典通りだからといって、そこだけで感動してくれたりする人はいませんし、あまりに頭でっかちになって”伝える”ってことの本質をずらさないように心がけています。」

イ:「皆さん、今日は、”いまの現場”の感性を伝えてくださって、ありがとうございました!」

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