『地球最後のオイルショック』見えない洪水が起きる前にノアの方舟を建造する必要がある(環境研究、未来予測)

 未来予測の方法のひとつに「アスク・ジ・オーソリティー法」という手法がある。未来予測が得意な人や未来予測の的中率の高い人にその予測を聞く。単純だが現実的な方法だが、筆者は170人もの専門家にヒアリングした結果が本書となる。
 本書は「ピーク・オイル論」に基づく。ピーク・オイル論とは埋蔵量の半分が生産された段階で起こる現象で、政治的な意図に関係なく、資源の減少という自然法則から起こる最後のオイルショックを指す。OPECの埋蔵量の水増し、情勢が安定した国での新規投資先もなく、ロシアやイラクなどの政治リスクの高い国にしか埋蔵されていない。代替エネルギーとしての原発も日本では政治コストが高く現実的ではない。さらに、再生可能エネルギーでは現在のエネルギー需要を満たすことはできない。

 地球温暖化でCO2の削減からの化石燃料消費を抑えようという議論も重要だが、それ以前に世界の化石燃料の埋蔵量が半分を切り、ピークオイルに達する日が来ることは100%間違いないことなのだ。このときにラスト・オイルショックが起き、世界構造と私たちひとりひとりの生活は大きく変化せざるを得ない。100億円の資産を持つものが半分を使い切る、100万円持つものが半分を使い切る、それぞれ50%を切った段階で行動が変化することは容易に想像がつくだろう。

 現在は石油エネルギーの代替としての天然ガスのメタン、ウランによる原子力が期待されているが、前者は現在ウクライナと戦争を行っているロシア、後者はICBMをたびたび発射する北朝鮮が埋蔵量で世界ナンバーワンだ。これは神のいたずらなのだろうか。人類に与えられた課題なのだろうか。私は、ロシアや北朝鮮のような国々とも衝突を起こさない社会を築く知恵が人類には必要なのだ、と考えるべきだと思う。もちろん、核融合や宇宙太陽光発電を実現させることや再生可能エネルギーからの蓄電社会システムもラスト・オイルショックを乗り切る代替案になるだろう。

 ピーク・オイル論と国際政治、ピーク・オイル論と代替技術、ピーク・オイル論と世界の構造、ピーク・オイル論と私たちの日々の生活など、ひとりひとりに突きつけられた課題はまったなしの状況なのだ。つまり、見えない洪水が起きる前にノアの方舟を建造する必要がある。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。