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『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった』マーロン・ブランドの『波止場』を一緒に鑑賞すべきだ(世界の歴史)

 玄関で靴を脱ぎ散らかす子どもは注意しても直らない。ならば、玄関にチョークで靴の足形を書き、「靴を脱いだらここにおくのですよ」と教えると、子どもは靴をそこに脱ぐようになる。母親がそれを褒めると定着する。これは「システムとは何か」を伝えるときによく使われる例だが、本書はコンテナの存在がイノベーションとしての「システム」として機能した物語だ。この物語は、イノベーションとは、人類への貢献や画期的な技術革新だけに与えられた言葉ではなく、世の中を、地域を、会社を、商品を、サービスを、少しでもよくしようとしてきた人たちすべてに与えられる言葉だとうことを教えてくれる。

 コンテナを使うことをはじめた起業家マクリーンを描いた第3章は参考になる。マクリーンはコンテナを発明したのではなく、海運業を船を運行する産業ではなく、貨物を運ぶ産業だと使命分析したことだ。マクリーンはこの洞察によりコンテナをシステム(コンテナリゼーション)に変容させた。また、コンテナのサイズを定義するISO(ヨーロッパ)とアメリカの関係や、ベトナム戦争の兵站への適応などの歴史も興味深い。

 本書の読み方としてオススメは、マーロン・ブランドの『波止場』を鑑賞してから本書を読むか、本書を読んでから鑑賞するのがいい。なぜなら、従来の波止場の大量の労働者が冲仲仕(港湾労働者)の実態を知ることができるからだ。湾港労働者と組合、利権を掌握する奴らとの関係性と、実際の作業にコンテンが存在したらどうなるのかがイメージできる。マーロン・ブランドの勇気とマクリーンの勇気が重なって見え、実に爽快になる。ビル・ゲイツも本書を評価しているようだが、彼のOSへの貢献とコンテンが重なって見えたのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。