見出し画像

『実践 シナリオ・プランニング 不確実性を「機会」に変える未来創造の技術』白紙にシナリオが創造できる能力が必要なのが、未来創造人材だ(環境研究、未来予測)

 シナリオ・ライティング法(シナリオ・プランニング)は、不果実性が高いVUCA時代に必要なもので、不確実な可能性が現実になった場合の対応を含め考えるものだ。著者は欧米にあるシナリオ・プランニングをキャッチアップする際に、必ず「What if」というキーワードを目にしたとある。大前研一氏は『企業参謀』で日本人には「What's if」という思考法が欠落している。IT業界から戦略的経営者が出現するのは、プログラミング言語に「if 文」があるからだ、と。要するに、日本人はシナリオ・プランニングが苦手だ。代替案という考え方もなく、今までの成功体験をそのまま続けているだけの人がほとんどだ。

 したがって、シナリオ・プラニングを学ぶには、すでに作られたシナリオを読むことだとしている。ここではWEF(世界経済フォーラム)の「2030年の世界における食料システム」などを対象にしている。しかし、私が一番良いと思われるのは、ハーマン・カーンなどのシナリオ・ライティングされたものを読むことだ。なぜなら、シナリオ・ライティング法は、未来がこうなるだろうというシナリオを書き、そのシナリオと現実に起きそうなそうなこととの間での矛盾を探ることが重要だからだ。それには、演繹的な思考で数学や物理学のような論理的矛盾のないシナリオを必要とする。これは誰でもできることではなく、ハーマン・カーンなどの一部の人が可能な手法なので、誰でもできるという論法で解説するには無理がある。とかく、欧米でできた手法を日本に持ち込む人は、その形式や、プロセスを模倣してしまうが、シェル社が白紙から考えたものをキャッチアップするのではなく、本質を掴み、白紙にシナリオを書き上げる創造性こそがシナリオ・プランニングに求められる能力となる。そこには本書にもあるSPEED分析も必要だし、インテリジェンス分野で使われるクロノロジー分析も必要になるだろう。

 ただし、シナリオ・プランニングに挑戦することは、考え方の多様性を活かす未来創造組織や、未来創造人材を生み出すことにつながることだけは確かだ。また、本書で紹介しているシナリオ・プランニングは適応型シナリオ・プランニング(未来を理解するためのプランニング)である。したがって本書は、変容型シナリオ・プランニング(未来に影響を及ぼすためのプランニング)を学ぶのには適さない。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。