『多産多死と己の失敗』(失敗研究、イスラエル)
なぜイスラエルはStart-up Nationと呼ばれ、多くのベンチャーが起業されるのだろうか。
1)国民皆兵制、2)ペレストロイカでロシアから優秀な移民が急増、3)周りが敵だらけ、という通説があるが、スイスや韓国なども1)国民皆兵制ですし、最近のドイツは 2)移民が急増しているし、北朝鮮なども 3)周りは敵だらけだ。
私はこれらとは別の2つの大きな要因があると考えている。
ひとつは逆境だ。
イスラエルを訪れた人は水の少ない砂漠なのに緑が多いのに驚くが、彼らは砂漠を緑化するシステムの数々を創造した。なぜなら創造しないとあの土地では生きていけないからだ。そして民族の歴史そのものも逆境の連続だ。
もうひとつは旧約聖書(タナハ)だ。
旧約聖書は、人間の失敗の記録がつづられているが、彼らはこれに向き合いながら現在や未来を思考するとなると、ゴールドラット博士の次の名言は、人生や生活に浸み込んでくる。
例えば、イスラエルの敬虔なユダヤ教徒の取引先と日本の居酒屋で飲んでいるとき、突然旧約聖書のことが話題になり、彼は「旧約聖書はシステムだ」と語り出したのだ。普段の生活の隅々に旧約聖書が浸み込んでいると感じたと同時に、旧約聖書がシステム?とはどういう意味だろう、と大きな疑問が湧いた。
イスラエル人とビジネスを行ったり、旧約聖書を何度も読んでいるうちに、「なるほど」と納得した経験がある。
余談だが、モーセ五書(旧約聖書の律法)はペルシャ帝国がユダヤ人を統治していたころ、ユダヤ民族の統治テクニックとして生活を律する中心となるものを、ペルシャ官僚だったユダヤ人エズラに命じ、編纂させたもだ。
となると、皮肉にも現在のイランが旧約聖書に権威を付与した(キリスト教におけるローマ帝国の役割と同じ)生みの親ということになる。
さて、本題に戻る。
一流の大企業における新ビジネスの成功の確率、あるいは有名なシリコンバレーのベンチャーキャピタルの投資案件が成功する確率はどのくらいなのだろう。
マーケットエントリーコンサルティング(Market Entry Consulting)を行っている友人は、イスラエルと契約するなら最低3つは契約すべきだ。なぜなら、そうすれば1件は成功するから、と。
イスラエルに限らず多産多死が当たり前なのがStart upと考えておいた方が間違いない。
私の経験からもこのことを考察してみる。
このように私の経験からも、単なる販売契約ですら成功する確率は100%でないことは確かだ。しかし、最低3社と契約すべき、という頭の良いイスラエル人の友人の言葉はそのまま鵜呑みしない方がいい。そして、イスラエルとのオープンイノベーションを成功させるためには、いくつかの必要条件を満たす必要があることも「己の失敗」から学ぶことができた。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。