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『脳科学がビジネスを変える: ニューロイノベーションへの挑戦』ミームはミラーニューロンが裏付ける

 脳科学の研究が本格化したのは、脳の活動を画像処理技術で「見える化」できるようになった1990年代からだ。脳科学は世界中で取り組まれているが、特にイスラエルが力を入れている。BMI(Brain-machine interface)と治療用神経デバイスの研究開発に力を入れている。

 人の情動を決める脳内化学物質は60種類程度ある。代表的な脳内化学物質は次の3つだ。

1)セロトニン

 不安を制御する脳内化学物質、不安解消物質と言われ、少ないとうつ病のリスクがある。正常な範囲でもセロトニンが少ないと悲観的傾向が強くなる。セロトニンの受容体(トランスポーター)は人種により型の比率が異なり、遺伝子にはS型とL型がある。S型がある人はL型がある人に比べて不安傾向が強く、その組み合わせSS型>SL型>LL型の順で不安傾向が強い。
 日本人はSS型68.2%、SL型が30.1%、LL型が1.7%で、S型を有している割合が98.3%にもなる。アメリカ人の場合は、SS型18.8%、SL型48.9%、LL型32.3%とLL型が1/3を占める。つまり、日本人は遺伝的に起業家が生まれにくいのだ。大企業の社内企業プログラムや新規プロジェクトなどが日本人に合うとも言える。

2)ドーパミン

 ドーパミンは脳の錯覚を制御する脳内化学物質だ。ドーパミンは行動の動機づけと関連し、不足すると新しいことをはじめる意欲が少なくなる。

3)オキシトシン

 オキシトシンは俗称で、幸せホルモン、安らぎホルモン、愛情ホルモン、信頼ホルモン、絆ホルモン、利他的遺伝子ともいわれ、絆の効果がある。

 利己的遺伝子で有名なリチャード・ドーキンスの提唱したミーム(文化的遺伝子)という概念がある。ドーキンスは文化は脳から脳へ伝達される情報だ。このミームの考え方を裏付けるミラーニューロンという脳の仕組みがある。
 ミラーニューロンとは物真似ニューロンと呼ばれ、人が実際に行動しているときと他者の行動を観察するときの両方で活動を示す。ミラーニューロンの役割は、他者の行為の意味の理解である。多くの人は、人の行動を見て何をしようとしているのか、その意図を理解できる。人の真似をして学習する行為にもミラーニューロンが関わっている。

 ミラーニューロンと文化を直接結びつける研究はまだない。しかし、文化が脳を創り、脳が文化を創ることは間違いない。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。