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『入門 シナリオ・プランニング ゼロベース発想の意思決定ツール』 第六感を養うことが重要(環境研究、未来予測)

 シナリオ・ライティング法(シナリオ・プランニング)の歴史は、第二次大戦による軍事用途⇒ランド研究所のハーマン・カーンにより民生化⇒シャル社のピエール・ワック(ピーター シュワルツ、現在のセールス・フォース社の戦略計画担当上級副社長)が、ハーマン・カーンの影響を受け、オイルショックのシナリオを策定⇒ピエール・ワックの部下たち(本書の著者のキース・ハイデン)という相伝伝承が行われている。

 本書の訳者は、キース・ハイデン氏から受け継ぎオムロン社の中でシナリオシンキングを実践していた西村行巧さんだ。彼は一部の戦略策定家の中での未来予測手法とされているシナリオ・プランニングを不確実性の高い地代の「経営の思考法」と位置づけている。例えば、シナリオ思考は、競合他社が予測できない斬新的なアイデアを実践することが可能になる。組織にいて重要な意志决定や戦略的な方向性に関する討議など、その結果が重大な意味合いを持つ状況で、トップの意見の反論がでるケース、公然と反論するケースは稀だ。シナリオ・プランニングは、このような組織活動に宿る病理を除去し、意見や信念を効果的に話し合えるようになる。未来シナリオは、複数の選択肢を分析し、そのベースとなる過程をテストする。こうした活動で視野が広がる。さらに、シナリオ・シュミレーションは危機管理分野で絶えず応用されてきた。現在はエンタープライズ・リスクマネージメントの分野にはシナリオ・プランニングは必須ツールだろう。

 前述のハーマン・カーンからの流れと並行し、フランス人哲学者ガストン・ベルジュは「プロスペクティブ研究センター」を設立。彼の考え方は、「未来とは、すでに運命づけられた時間的連続の一部だけでなく、創造可能で、人間に有益なように意識的に設計できるもの」と捉えている。フランスは公共の政策・計画策定に活用された。また、ローマ・クラブがMITに依頼し作成されたシナリオは資源は無尽蔵ではないという事実を地球人に気づかせた。1980年代になると、フォーチェン1000社の46%、フォーチェン100社については75%の企業がシナリオ手法を採用、シナリオ・プランニングの採用企業の72%は、少なくとも10年以上先のシナリオを考察していた。

 シナリオを策定するにおいて、検討中の事業環境や時間枠のなかで成り行きを決定する基本的な影響力を持つ要素であるドライビング・フォースの決定と検証が必要だ。例えば、事業計画策定で利用されるSTEEP分析、社会(Sciety)、技術(Technological)、経済(Economic)、生態系(Ecological)、政治(Politial)は変化要因として分析する方法は知られているが、これらもドライビング・フォースとなる。それらのインパクトと不確実性をマトリックスで整理し、複数のシナリオを策定する。

 面白いのは最後に、読者に以下の選択を迫っている。シナリオ・プランニングには第六感が重要なのだ。

 どのようなタイプのマネージャを目指すか。組織の存続のために闘うマネージャーか。すでに成功している組織の場合、現状を維持しその延長線上にとどまるタイプか、それとも第六感を養い、既存の成功だけでなく潜在能力も発展させようとするタイプか。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。