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『心と体と』フロイトの性の理論を映画化したとも捉えれる(マスクドニード)

 フロイトには、夢に現れる無意識は抑圧された願望の充足を目的とし、多くは偽装された形で現れるというフロイトのエディプス・コンプレクスに代表される性の理論があるが、この映画はそれと恋愛をかけ合わせたものだ。

 主人公のひとりは壮年の片腕が不自由でひとりで暮らす男性。もうひとりはアスペルガー症候群で内向的で繊細な女性。ある事件がきっかけで社員のメンタル分析を行った聞き取り調査で、二人が偶然同じ夢、森にいるペアの鹿の夢を観たことから物語ははじまる。夢に偽装して現れた鹿が何を意味するかは分からないが、徐々に二人の距離は縮まる。このプロセスの繊細な描写は精神分析的にも考察されたものなのだろう。

 ハンガリーの映画だが、フロイトやユングなどの知識をある程度持っている人を対象にしていると考えると、ヨーロッパでは精神分析は日常的な教養のひとつなのだろう。それが前提になく映画を観ると静かに淡々と進む映画としてしか映らない可能性がある。食肉工場という舞台の設定と主人公の女性のコントラストにも映像効果の意図を感じる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。