見出し画像

『わかりやすいパーソナリティ心理学』パーソナリティ心理学におけるTAT法の位置づけが把握できた(マスクドニード)

 この本は、「パーソナリティ心理学」を俯瞰的に捉えることができる1冊で、システム工学の勉強のために読んでみたので、参考になる点をピックアップしてみる。

 8歳のころに、暴力的なテレビ番組やゲームを常習的だった子供たちが20〜25歳になった15年後を追跡調査した結果、視聴時間が上位1/4では、以下のような攻撃行動がみられた。

男性:犯罪を犯した人(11%)、過去1年間に配偶者を押したり掴んだり突き飛ばした人(42%)、過去1年間に腹を立てて誰かを突き飛ばした人(69%)
女性:過去1年間に配偶者に物を投げた人(39%)、過去1年間に腹を立ててだれか大人を殴ったり首をしめた人(17%)

 また、ブッシュマンの攻撃性の高い人と中程度の人、低い人に分けたところ、性格特性として攻撃性の高い人においてのみ、暴力的な映画を観ることで攻撃性が高まった。そこから、もともと攻撃性の高い人の攻撃性をさらに引き出す効果があるのではないかと結論づけている。

 自己責任性についての考えも面白い。自分の行動の結果をコントロールしている要因が自分の内側にあるか、外側にあるかにより、内的統制型と外的統制型に類型化できる。原因帰属とモチベーションには密接な関係があり、モチベーションの高い人は成功も失敗も内的要因にあるが、低い人は成功も失敗も外的要因にする傾向があるという。つまり、内的に自分が頑張ればよい結果になると考える人と、自分がいくら頑張っても何も変わらないという思考習慣に分かれる。

 フロイト、ユング、アドラーの心理学をまとめてあるが、改めて比較してみるとフランクルのロゴセラピーが、現在の私には響く。つまり、自分の人生が意味によってどれだけ満たされているかということだ。つまり今の状況が、意味への意志に満たされていないということになる。
 パーソナリティの把握に、自分のエピソードなどのナラティブ(物語)を語るという手法があることも面白い。特徴を際立たせることができるので、自分に降りかかった出来事に意味づけを行うことができるのだ。

 システム工学的に意味があるのは、パーソナリティの形成における遺伝要因と環境要因について、今までの心理学業界の考えた方から現在までのプロセスを把握することができたことだ。ただし、日本人には不安傾向の強さと関連するセロトニントランスポーター遺伝子の配列をもつ人が非常に多く、新奇性を求める傾向と関連するドーパミン受容体遺伝子の配列をもつ人がほとんどいないということからも、パーソナリティには遺伝的基礎があるとも言えることから、種族による遺伝的ベースがあっての親からの遺伝要因と環境要因ということになる。

 また、文化人類学からの派生としての心理人類学の存在は、構造哲学が注目してこなかった構造の中にいる人間などを明らかにすることだと紹介している。つまり、文化の生成に人間の心理的側面が大きく影響しているということだろう。あたりまえのことだが。 

 最後に、パーソナリティの把握方法として、深層心理を掴むロールシャッハテストやTAT法の紹介がある。TAT法はシステム工学のひとつつの手法だが、本書により、心理学全体から俯瞰すると、どこに位置づけられるのかを知ることができたのは幸いだった。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。