『スタグフレーション 生活を直撃する経済危機』スタグフレーション襲来(環境研究)

 今までのスタグフレーションに関する本は、オイルショックが終わり、数年後に統計的なデータなどに基づいて書かれたものが多く、それが起こる前に書かれたものはなかった。しかし今回は、すでに過去経験があることから、今後顕著化する事象を予測するこのような本が多く出てくるだろう。
 スタグフレーションとは何か、日本が他国と違う状況にあること、影響を受けることとして、保険の解約や見直し、自動車売却などのコスト削減方法や収入アップの手段として副業を挙げている。

 この本には取り上げられていないが、スタグフレーションで実に不思議なことがある。

 それは、Google Trendで「スタグフレーション」というキーワードの傾向を調べると、コロナ禍に突入するときや、原油が上がるときに、検索数が増加していることは読み取れる。しかし、キーワードとしてのスタグフレーションは、なぜか、首都圏、名古屋圏、大阪圏(+北海道)などの都会でしか検索されていないのだ。実に不思議だ。

 スタグフレーションになって、精神的にも実質的にも、大きな影響を受けるのは、変動金利の住宅ローンを抱える家庭だ。日銀総裁が任期となる2023年4月以降には、金利を上げるプレッシャーが増す。それらのニュースに対するプレッシャーも相当あるだろうし、上がってしまったら大打撃になることは間違いない。日本は20年以上の低金利(ゼロ金利、マイナス金利を含む)に慣れてしまった。私が銀行借り入れをしていた時期は7%、8%という金利は普通で、それを長短織り交ぜて経営を行っていたように、スタグフレーションをトリガーに金利は上がる時代に戻るだろう。

 仮に、金利上昇を行うのが難しい場合、円ドルレートが150円を超えると、ほとんどのグローバル企業で国内回帰が決断され、製品によって輸出モデルのビジネスに転換されることになる。(キヤノンなどはそれをすでに決断している)
 あらゆる企業で、国内の生産性を上げる方法がビルトインできれば高効率な体質になる。しかし、それでも人手が不足してしまい、外国人労働者をさらに増やす必要性がでてくるのだろう。もちろん、日本人の非正規労働者の仕事も増えるのだろうが、賃金は上がらない。結局、政策で最低賃金を時間給1,500円ぐらいまでUpしないと、彼らは乗り切ることは難しい。

 私はスタグフレーションを「スタグフレーション襲来」という表現することにしている。蒙古襲来のように、攻め込んでくるイメージが強いからだ。「逆境は成長のルーツ」というスタンスで望めば、国も企業も個人も構造を新しくする絶好のチャンスとなる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。