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『引いて考えると使命分析』(2−2)インサイトとデプスインタビュー

 次の図はインサイトからはじまり、使命分析に終わる使命分析のフローだが、使命分析の次のフェーズは「現状分析」となり、イノベーションを生み出す流れは続いていく。しかし、この使命分析のフローがうまくできないと、その後のフローからの成果は期待できないことは(2−1)目的と使命の関係で前述した。

使命分析のフロー

 使命を明らかにしようとすると、必ず顧客を明らかにする必然性が出てくる。たとえば『仕事を減らす』の顧客は自分の仕事を減らす訳だから自分になる。『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の顧客はイノベーションを生み出したいと考える人である。(最初に購入する読者は糸川英夫のファン)

 この2冊の本は同時並行で制作していたので、最強のポータブルスキルであるイノベーションを身につけるための入門書と実践書というインサイトがあるとも考えた。同じ業界での転職(転社)と異業種への転職(越境人材、非連続キャリア)の違いが明らかになるにつれて、創造性やイノベーションのポータブルスキルとしての価値は高まる。

 10年ごとに商売替えをした糸川英夫、スケールは小さいが、私の「逆さ人生」も10年ごとに異質な仕事に転身しているので、多少の説得力もあるだろう。商売替え(越境、非連続)に必要な能力はどんな分野でも発揮することができる創造性だ。

 つまり、同業種の中での転職(転社)のみならず、転職がハプンスタンスアプローチ(計画的偶発性理論)が80%であるという現実から、異業種への転職も受け入れれる能力を身につけたいというインサイトは一定数あるはずだと考えたのだ。要するに転職するしないかは別にして、「辞める力」だけは身についておきたいと考えるのが、会社にしがみつかない会社員のインサイトなのだろう、と。

 そこで、創造性を次の4つに分類するカフマンの4つの創造性という図を用意した。

4つの創造性

 4つの創造性については、「『働き方改革のイノベーション』(まとめ)4つの創造性」にあるように、創造性は段階的に身につけるのがスムースだということもわかっている。このように『仕事を減らす』と『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』は、mini-cからlittle-cまでのイノベーションの入門編、Pro-cからBig-cまでのイノベーションの実践編と、それぞれをポジショニングしたのである。このように2冊の本をまとめたときのインサイトも考えた。

4つの創造性とポジショニング

 使命分析のフローを考えたのは、糸川英夫博士だが、創造性やイノベーションを生み出す方法を、できるだけシンプルに応用が効くように考えられたもので、糸川さん自身の実践は九七式戦闘機、バイオリン、ロケットなどで解説済みだ。さらに私の例では、仕事を1時間で終わらすことができたことなど、それぞれの本で紹介済みだ。

 このように『仕事を減らす』だけのインサイト、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』だけのインサイトと、2冊をまとめたときのインサイトの3つを考えた。

 インサイトとは、いまは覆面をかぶっているマスクドニードを指す。英語の「Hidden Needs」(潜在ニード)と同じものだ。スティーブ・ジョブズに次の名言があるが、これがまさにインサイトを表現したものだ。

 消費者に、何か欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人はカタチにして見せてもらうまで、自分が何が欲しいのか、わからないものだ。

 私は友人・知人と酒を飲む席で言われることは、いろいろなことを体験しているなど、そんなことぐらいしか褒められることがない。失敗ばかりなので成功していないからだとも言えるが、同じ会社や同じ仕事を長く続けている人からすると異質なためか、可能ならば創造性というポータブルスキルを段階的に身につけたい(できれば自分も10年ごとに仕事を変えてみたい)と深層心理にあると思わされる会話になる。まさにこれがデプスインタビューで、酒を飲みながら雑多な会話から深層にある意識(インサイト)を知ることができる。逆に正面きって質問すると、「異業種に転職する勇気はない」「いまの仕事で十分」という答えが返ってくるのである。

 『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』で紹介した糸川さんのデプスインタビューの方法は、パイロットと麻雀をしたり、一緒に生活したりと親しくすることに徹したようだ。

 また、トヨタ自動車で初代レクサスを設計した櫻井克夫氏は、次のような方法でインサイトの発見を行った。

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