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『靴ひも』アムヌンを思い出す映画だ

 感動させられると分かっているストーリーなのだが、ついつい観てしまいたくなるタイプの映画だ。テーマは普遍的な父と子の愛情と思いきや、ひとりの子供の自立プロセスを描いたものだ。

 イスラエルにあるガリラヤ湖にはティラピアという魚がいる。ピーターフィッシュとも呼ばれているが、クロスズメダイの一種で淡水の鯛だ。この魚は、メスが産んだ卵から孵化した子供を、オスの口の中で育てるマウスブリーダー(口内保育)という習性がある。しかし、稚魚がある程度成長すると、オスは稚魚が再び口の中に入ってこないように湖底の小石を口に含むという。マタイの福音書に、ペテロがガリラヤ湖で釣りをしていると、口に銀貨をくわえた魚が釣れたという記述があるが、おそらくティラピアの習性として、小石の代わりに銀貨を加えたののだろう。いずれにしても、口に入ることができなくなった稚魚は、自立せざるを得なくなり、大人になっていく。
 ちなみに、ヘブライ語ではこの魚をアムヌンと呼んでいる。アムヌンとは「母なる魚」を意味するが、子離れできない母親へのユダヤ的なジョークなのだろうか。

 発達障害の子供は、靴紐が結べないというが、この映画の主人公は、それができるようなり、ティラピアの稚魚のように、見事に自立していく。涙なくしては観ることができない感動的な作品だ。仕事で溜まったストレスを発散する手段のひとつとして、この映画をオススメする。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。