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『社会学の新地平』ウェーバーとルーマンの組み合わせ(世界の歴史)

 本書の前提として、社会学とは何か、システムとは何かについて、次のように捉えられている。

  • 社会学とは何か
    社会学とは世の中を別の視点(たとえば死者の目)で見る学問で、それによってオルタナティブを導くもの。また、別の視点として外へ出たとしても内へ戻ってくることで社会学が成立する。死者の目で見てから生の目で捉えることで、生の視点で社会学が生きる。たとえば、会社であれば、そこから出ることで本質が見えてくる。その後、戻ると本質に対する対処できるる。

  • システムとは何か
    システムとは内と外を区別するもの。

 ウェーバーの主張は、資本主義がプロテスタントという宗教から生まれたと捉えられるのが一般的だが、資本主義は宗教と似ていると主張している。たとえば、カルヴァン派の予定説に準ずると、人間が救済されるためには倫理的に労働をしなければならないと永遠に感じることになる。同じように、非正規労働者である派遣労働者が正社員になれるかなれないかは自分自身にはわからないため、永遠に従順に一生懸命働かなければならない。  

 このことをウェーバは「ウェーバー&商会」という親族の工場経営を外から俯瞰することで発見した。資本主義の精神は、労働者個人個人に決定を委ねられる組織で自由な決定が行われ急成長を遂げていったのが「ウェーバー&商会」だった。同じように、プロテスタンティズムの世俗内禁欲では、生活規則の選択は、信者一人ひとりの個人の決定に委ねられる。「この人は救われる」という神の決定があるという前提で、「自分は救われる」を証明するために、事業の進め方や消費生活のあり方を決定する。

 さらに、資本主義は西ヨーロッパから生まれた理由は、西ヨーロッパには複数の国があり、ドイツは連邦制だ。そうなると容易に自国を他国、自連邦を他連邦の視点から俯瞰することができる。擬似的に外から内を見ることができるため、組織のあり方が進化してきた。

 ウェーバーもルーマンももともと法学を学び、専門職の資格も取得し実務も携わり、その後、社会学者になっている。ウェーバーは組織を会社法で捉えたため、「合理的組織」を階層型の決定組織をイメージしていた。階層型の業務処理では、下位者は上位者よりも常に小さく重要でない決定しかできない。一方、ルーマンは組織の業務のあり方が階層型から外れることを前提として捉えた。なぜなら、部下の方が上司より専門性が高かったり、現場のニードを理解している。決定が上意下達ではなく、多くの個人の決定が連鎖しながらくだされる。前の決定が後の決定を前提として引き継ぐことで創り出される。複数の決定を連ねて外部の変化に対応していく。水平的な協働を実現できる組織を「合理的組織」とした。

 ルーマンは社会学の外にある生命システムの細胞、神経系、生物体などが、自分で自分自身をつくりだすというサイクルを反復することで、自律的に秩序が生成されるようなプロセス(オートポイエーシス・システム)から、内である社会学に戻り、コミュニケーションがコミュニケーションを生むとした。これが現代の「合理的組織」であって、ウェーバーの官僚型組織で会社を捉える非現実性にリアリティーを与えることができる。
 ウェーバーとルーマンを組み合わせすることで、ウェーバーの社会学が現在の社会学となる。

  1. プロテスタンティズムの倫理(ウェーバー)

  2. 自由な合理的組織(ルーマン)

 これらの社会学の考察から、会社を退職し外に出て本質を理解し、会社に戻ることが経営に大いに役立つことがわかる。大企業からスタートアップ、JTCから外資系という一方通行ではなく、内へ戻るというシステムをビルトインすることが、現在の合理的組織の未来を拓くのである。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。