『ヴィゴツキー入門』定式化することが得意(業界の歴史)

 ヴィゴツキーを「境界学習」の本で知ったため、入門書を読んでみることにした。模倣を機械的な活動とみるのではなく、模倣を通じた「協同」による発達を「発達の最近接領域」とする。ヴィゴツキーはこの考え方を、健常児ではなく、障害をもつ子供にも適応できることを確認している。

 本書は、ヴィゴツキーは心理学を定式化、法則化することが得意だったようだ。
 例えば、子供の高次な精神機能は、以下のように定式化している。

「あらゆる高次の精神機能は、子供の発達において二回現れる。最初は、集団的活動、社会的活動として、すなわち精神間機能として、二回目は個人的活動として、子供の思考内部の方法として、すなわち精神的内機能として現れる」

 ことばの発達については、以下のように法則化している。

「①ことばの初歩的、低次の特性の無自覚的習得から、言語の音声的構造や文法形式の自覚的使用へ発達するという法則。
 ②「話しことばと書きことば」「生活的概念と科学的概念」「母語と外国語」とのあいだには、相互関連があり、反対方向へ発達するという法則」

 つまり、子どもは学校で書きことばを学習するなかで、自分の話していることを学ぶ。自分の言語能力を随意的に操作することを学ぶのである。(反対方向に発達する)

 また、ヴィゴツキーはユダヤ人で、演劇鑑賞が趣味だったという。そこから『芸術心理学』が生まれ、芸術教育には以下の原則があるという。

「普通教育の問題としての芸術の専門教育は、最小限にまで短縮された一定の枠内で導入される必要があり、美育のほかの二つの路線(子ども自身の創造力とその芸術鑑賞の教養)と結びつくことが肝要であり、技術を乗り越えて創作論(創作すること、あるいは理解すること)を教えるような技術教育のみが有益である。」

 ヴィゴツキーは晩年、精神病理学の研究の必要性を感じると、ハリコフ医科大学に通信教育で入学し、試験も受けて三年課程を修了している。このことからも、学問を専門的領域で捉えるのではなく、ニードに合わせて横断的に捉えていた人だと推測できる。だからこそ、早熟な「心理学におけるモーツァルト」と呼ばれていたのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。