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『消費から考えるポストコロナと女性の消費』(環境研究)

 2020年初頭は新型コロナウイルスで世界中が混乱していますが、いずれこの混乱が落ち着いた後、日本の経済がどのように立ち上がって行くかを考察してみた。
 まずは、スウェーデンのトルンクイストの提示した以下の商品弾性率から話を進めてみる。

第1商品群:生活必需品(食⇒衣⇒住)
第2商品群:代用品(バターの代用品マーガリンなど)
第3商品群:比較的ぜいたく品(自動車、バイク、TVなど)第4商品群:純ぜいたく品(ゲーム、音楽などの持続性のない無限界商品、情緒性商品)
第5商品群:情緒安定化商品(あるいは産業)

 所得の増加率を横軸に、購買欲求の増加率を縦軸にすると、物質が欠乏しているBOP(Base Of Pyramid)で消費されるモノ、新興国で消費されるモノ、先進国で消費されるモノ、という大きく3つの所得の増加区分で第1商品群から第5商品群までの購買欲求を図示している。

 新型コロナウイルスにより、景気が悪くなるとしたら、どのようにどの程度悪くなるかは人により意見が異なる。
 コロナ対策でマネーサプライが急増したためスタグフレーションにおちいる可能性が高いという意見も多いが、ここでは、さらに悪化した場合を想定し、大恐慌時代を調べてみる。
 
 ルディー和子氏のブログ(NOW4 「大恐慌」時代に成功したマーケティング戦略)では、以下のように1929年の世界大恐慌時の消費傾向を分析している。

 米「大恐慌」時の消費者の所得レベルと購買行動を調べた結果によると、1)生活に困らないレベル以上の所得者は以前と変わらぬお金の使い方をした、2)所得レベルが一番低い層はギリギリの生活レベルに陥落し、3)中間レベルは通常の購買を先延ばしする傾向が高くなった。しかし、商品タイプ別に、恐慌以前の1928年の消費金額が恐慌ピークの1932年にどのくらい下がったかを比較してみると、いまの私たちが思うほどには落ちていない。

(下落率)
 消耗品 6%
 準耐久品 13%
 耐久品 24%
 サービス 8%
総合平均下落率 9%)

 もちろん、モノ余り時代で情報が世界同時に伝達される現代と1920年代とを同じレベルで比較することはできない。だが、市場環境の違いを考慮しながらも、そこに消費者心理の共通点を探してみることは悪いことではない。

 例えば、日本でも最近、消費者の買い控えが嘆かれるなか、高級化粧品(数万円するクリーム)は売れているという記事が出ていた。アメリカの恐慌時、最悪の経済状態だといわれた1933年においてさえも、化粧品の(インフレ調整済み)売上は1929年以前よりも高かった・・・というデータがある。

 意外なことに大恐慌でも売れていた化粧品(消耗品)は、トルンクイストの商品弾性率で考えると「美しくなりたい」という夢を実現する情緒型商品(第4商品群)ということになる。
 他の情緒型商品は、音楽や映画、ゲームなど、次から次へと際限なく刺激を求める商品やサービスを指し、大学でもう一度学びたいという学習マーケットや各地の温泉をめぐりなども情緒型商品に含まれる。
 これらの情緒型商品には可処分時間(ひとりの持ち時間)という共通の制約がある。
 このことを、日本の歴史における視点からも考察してみまよう。

 というわけで、結論に入ると、日本では女性の情緒的消費が常に最大消費である。(早くいえば見せびらかしの消費)
 平安時代は女性が十二単を着ていた。江戸時代は、国内で産出した金銀のほとんどすべて中国に送って、白絹と本を買っていた。買ってきた絹は大名の奥様が着た。大名、小名の着倒れ国・日本。それが高度成長のときに復活して、女性がブランド物を買いまくった。
 産業革命として紡績産業がなぜそんなに栄えたかというと、庶民や女性向けにとめどもなく木綿の衣料品を大量生産する時代になったからである。

 ペルリが日本に武力で開国を迫ってそれが実現したとき、イギリスは綿製品を大いに売り込もうとしたがまるで売れなかったので、日本駐在のイギリス公使はその原因と対策について本国へレポートを送っている。イギリス製の綿布は大量生産のため種類が少ないが、日本では何百種類もの綿布がある。普段着用、晴れ着用、男用、女用、高齢者用、中年用、若者用。それから衣類用と袋物用等々が専門文化してさらに順列組み合わせになっていることにイギリス公使は驚き、「足袋の底地まで特別専用品として作られている」とレポートに書いた。

『お金の正体』

 日本でも敗戦後は化粧品会社が一番最初に立ち上がりました。それから今度はアパレル産業になります。衣食住のこの三つはもちろんそうなんですけど、その衣食住を超えて必要な財貨というのは化粧品とアパレルになります。
(経済のスタートライン)

 そして念のため、1万年前の縄文時代からも考察しておきましょう。

 卑弥呼の時代、女性はシャーマンで、神のお告げを感じ取る力があった。しかし男にはなかった。だから女性が生産も消費も管理して男を指揮した。
 天気予報ができて人間関係が読める人は、リーダーになる。狩猟と採取に行く男は現場の兵隊にしかなれない。天皇制の前に、女を「ヒメ」、男を「ヒコ」と呼び、ヒメがヒコより上位にあった「ヒメ・ヒコ制」の時代があった。

 縄文時代またはその前の時代、三角形の掘っ立て小屋の真ん中に焚き火があって、女性はそれを絶やさないように守るのが仕事である。これを「ヒツギ」という。ファイヤーをリレーする意味だが太陽も発音は「匕」だ。天皇をヒツギノミコと呼ぶが、もともとは女がヒツギのヒメである。女性は火を継ぎつづけるうちに、太陽神のアマテラスになって、その血統を娘につたえた。火つぎも日嗣と同じで、それがあるときから男に移行する。

 「ヒメ・ヒコ制」が、国内統一の時代がきて、男が上に立つようになり、最後に勝ちのこった豪族が天皇になったとき、「ヒコ」が「ヒメ」になりかわった。軍事力から政治力が生まれる時代がきたのである。しかし政治指導者にはなったが、「ヒコ」は伝統により神を祭り、占いをするヒメの真似をしていた。女っぽいほうが指導者らしく見えたので、武力戦争で勝った後の「ヒコ」は、間もなく「ヒメ」化した。

 今日の政治体制である「天皇― 総理制」も形を変えたヒメ・ヒコ制とみることができるのである。

『1万年の天皇』

 ここまでの考察で、日本経済をスピーディーに立ち上げるには、以下がキーになるのではないかという仮説が成り立つ。

女性による情緒型商品(化粧品、アパレルなど)などの消費増幅マーケティング

注)第1商品群(生活必需品)の食衣住における「衣」ではなく「美しくなりたい」というニードを満たすような第4商品群に類する「衣」。

 中東諸国のGCCで多店舗展開しているダイソーにおいて、最も売れる商品は「つけまつ毛」だという。つまり、ニカブをかぶる中東の女性たちは、他の国の女性と同じように自分を少しでも魅力的にみせたいのだ。

 となると、女性の消費がを加速させるマーケティング手段を持つことが重要になるだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。