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『引いて考えると使命分析』(2−5)比較し引いて考える

 今回は、使命を明らかにするための3つの方法(空間時間、比較)の3つめ「比較」について解説していきたい。

 自分が生きている人間社会で考えると物事が複雑になってしまい、本題の本質や使命を明らかにすることが難しい場合がある。そんなときは誰もが第3者として観察できる自然の生物などと比較するとわかりやすい。これを比較し引いて考えると表現する。

 『弱者の戦略』には、次のような生物の戦略が解説されている。

 ナンバー1とオンリー1は対立するものというとらえ方が一般的だが、生物の世界では、強いものが生き残り、弱いものは滅んでしまう。つまり、ナンバー2がありえない競争排除則が生物のルール。しかし、生物の世界は多種多様な生物が共存している。それは棲み分けによって自分の居場所を作っているのだ。例えば、草原に住む動物では、シマウマは草の先端を食べる。ヌー(ウシ科)はその下の茎や葉を食べる。トムソンガゼル(シカ科)は地面に近い部分を食べるという具合に棲み分けているのだ。
 要するに、この世に存在している生物は、それがどんなにつまらない生き物であったとしても、それぞれの居場所でナンバー1なのである。マーケティング用語のニッチとは、本来装飾品を飾るための寺院などの壁面のくぼみを意味している。そこから生物学の分野では、ある生物種が生息する範囲の環境(生物的地位)を指すことになった。一つの壁のくぼみに一つの装飾品しか飾れないように、一つのニッチには一つの生物種しか住むことができないのである。つまり、ニッチとはナンバー1になれる場所なのだ。生物の世界ではナンバー1しか生き残れない。しかもナンバー1のチャンスは無数にある。そして、ナンバー1の条件は、誰にも負けないことではなく、誰にもできないことなのだ。

 企業経営を生き物の「ナンバー1=オンリー1」という考えで引いて考えると、人手が集まらないから賃金を上げるという考えでは、その業界や地域内で賃金を高く支払える会社がますますナンバー1になるということになる。ナンバー1より高く賃金を支払えない会社は、生物の世界で考えると2位や3位になるのではなく、滅びるということになる。
 生産労働人口が増えず、労働参加率(女性、高齢者を含む)が頭打ちという日本の現実から考えると、この問題は企業経営の最重要事項になることは間違いない。

 高い賃金を支払う以外で人手不足を補う方法は、『もっとも成果の上がる方法が、もっとも効率いいという働き方改革』で示したように、働いてみたいと思えるようなライフワークバランスが最高の会社になるようにするしかない。
 その手段は一人一人の仕事を「小さなイノベーション」で仕事の改革を行うことだ。これにはお金がかからないが、頭を使う必要がでてくる。逆にもっとも頭を使わない単純な方法は賃金を上げることだ。

 一人ひとりの社員が頭を使わないと実現することができないのが「もっとも成果の上がる方法が、もっとも効率いいという働き方改革」だ。これが実現できれば、個人のライフワークバランスだけでなく、賃金の原資となる新たな利益が生まれる可能性がでてくる。

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