『アフリカを学ぶ人のために』ウブントゥイズムには未来を感じる(環境研究)

 現在のアフリカは、すでに国家として独立した国々の集合体なので、一様に語ることはできないが、本書はアフリカを俯瞰するように解説した入門書だ。日本という観点からすると、正規の在留資格を持ち日本に滞在する人は、現在2万人だという。もっとも多いのがナイジェリア人で3245人、うち80%弱が成人男性だ。アフリカ系と日本人のあいだに生まれた移民2世が、東京オリンピックで活躍したことは記憶に新しい。

 アフリカに限らずアジア諸国から在留資格をもち日本で結婚するケースも多い。彼ら彼女らが、スポーツのように明らかに成績が数値で表せる世界でない仕事を選んだ場合、生き生きと活躍できる居場所がないことも多い。しかし、日本への定住化が進めば進むほど、故郷や他国の同郷者とのつながりは深化するのだ。人口減少が加速する今後の日本では、彼ら彼女らが日本と海外との架け橋という意味で重要になる。

 著者はアフリカの叡智として、パラヴァーとウブントゥイズムを挙げている。パラヴァーとはアフリカ式の揉め事の解決法だ。合意に達するための手段としての多数決とは違い、紛争当事者同士の自由で制限のない意見の開陳が合意の達成まで続けるという方法だ。この方法は、日本のアイヌと同じだ。アイヌは揉め事は言葉で解決する。しかも判事は存在せず、当事者同士が言葉で争う。決着は、どちらかがもう言うことがなくなるか、体力がつきて反論できなくなったら負けだ。ただし、相手が弁じている最中に口を挟んだり、頭にきて席を立ったら負けというルールがある。
 ウブントゥイズムは、前提として人間の不完全さを主張する。自立した個人が手をつなぎ合うイメージはヨーロッパの個人主義からの人間観だ。不完全で相手を凌駕しないなカタチで個人がつながるのがアフリカの人間観になる。ウブントゥは思いやりのある哲学だが、弱腰ではない。誰かの行動によって集団の成功が危ぶまれるときには、諌めなければならない。人の違いばかり探していたら、いつまでたってもうまくいかない。ウブントゥとは、人との共通点を探し、最もうまく力を合わせる術を見出すことだ。ウブントゥの精神を一言でいえば、コミュニティである。第1段階は、人をありのままに認めること。これがウブントゥの根幹である。第2段階は、人がやったことを認めること。

 異なる集団同士がその差異を固定化もせず絶対化もせず、対話によって新たな共同性を構築しながら共住の場を生成していくことが現代アフリカ社会で、このことはわれわれが学ぶべきことなのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。