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『移民の人権 外国人から市民へ』 メンタルの問題は母国語のコミュニケーションが必要(環境研究)

 名古屋多文化共生研究会の会長で、名城大学法学部教授、移民政策学会元会長、総務省、愛知県、名古屋市、可児市、安城市、春日井市、田原市、小牧市、西尾市、各務原市の「多文化共生プラン」などの作成に携わっている近藤敦氏が、2021年4月に明石書店から「移民の人権」という本を出版した。

 この本の第4章では経済的権利と題し、外国人の経済的権利として、職業選択の自由(憲法22条)、財産権(憲法29条)、勤労の権利(憲法27条)、および労働基本権(憲法28条)について事件について紹介されているので、抜粋し列挙する。
(2022年から特定技能人材に永住権が認められた。これは2017年に西日本新聞社が著者で明石書店から発売された『新移民時代―外国人労働者と共に生きる社会』を当時の菅官房長官が読み決断したものといわれている)

【ナルコ事件】日本語をほとんど理解できない中国人研修生に対し、母語での書面や交付や説明による安全教育が行われなかったことが、パイプ加工工場での事故につながり、安全配慮義務に違反するとして損害賠償を求めた。

【日立就職差別事件】在日朝鮮人であることを隠して応募した原告が内定を受け、入寮手続きの際に在日朝鮮人であることを告げたとたんに内定を取り消された。

【東京国際学園事件】外国人との契約だけが「期間の定めある契約」、すなわち有期契約であることが、外国人差別に当たるかどうかが争われた。

【ジャパンタイムズ事件】外国人記者の期間の定めは、賃金の優遇などを理由に、差別に当たらないとした。

【フィリップス・ジャパン事件】4回の更新後の雇止めが問題となった。

【ユニスコープ事件】入管手続上の雇用契約書の記載は、形式的なものにすぎないとみる余地があるとした。

【デーバー加工サービス事件】外国人研修生・技能実習生の寮費(住居費と水道光熱費)について、同じ寮に住む日本人従業員よりも3.3倍ないし2.3倍高く徴収したことが、労働基準法3条の均等待遇違反に反するとした。

【フルタフーズ事件】妊娠禁止規定により技能実習生を打切り、即時帰国を求めることは、民法90条に反するとした。

【ヒロセ電機事件】日本人の妻と結婚後に帰化により日本国籍を取得した。そこで、業務上必要な日英の語学力と品質管理能力を備えた即戦力として採用されたが、期待された能力がない、日本語の提出した文書も妻が書いた、と解雇された。労働契約法16条の乱用ではないと解雇は有効。

【三洋機械商事事件】原告の翻訳ミスで生じた二重払いをめぐる言い争いで、原告が暴言を吐き、名刺入れをたたきつけたことは懲戒解雇にあたるが、社長の言動も曖昧なので、中国人の国民性からも勘案し、解雇は無効となった。

【モーブッサンジャパン事件】フランス人の原告が履歴書にパリ政治学院と記載したことは、中途の経歴を詐称して、卒業と偽った事実を推認できないとして、解雇を無効とした。

【改進者社事件】「労働災害」において「不法就労者」が損害賠償を請求する場合の逸失利益の算定は、日本の基準によるか、出身国の基準によるか、最高裁は折衷案的な立場をとった。

 さらに、第5章では「社会的権利」として、日本国憲法25条の生存権と、国際人権法でいうところの社会的権利、とりわけ、社会権規約の9条の社会保障の権利、同10条の家族・母親・子供の保護、同11条の十分な生活の権利、および同2条の健康権などがまとめてある。

 2020年の「在留外国人に対する基礎調査」によれば、病院での言葉の問題への対応状況をみると、「日本語が理解できるので困らなかった」は44.2%だが、「日本語のできる家族・親族・友人・知人を連れて行った」(31.7%)、「多言語翻訳機・アプリを利用した」(13.4%)、「多言語対応の病院に行った」(3.9%)、「医療通訳を依頼した」(2.3%)、「医療通訳以外の通訳を依頼した」(2.2%)とある。 日本政府の2国間協定を締結した国は、現在のところ以下であるが、英語で対処できる場合は別にして、メンタルなどを含め母国語でないと対応できない場合も多く(例えば、日本語で「胃がしくしく痛い」という表現を英語にしにくいように)、その対策を準備することが「選ばれる会社」になることだけは確かだ。

 フィリピン、ネパール、モンゴル、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、カンボジア、ミャンマー、スリランカ、ベトナム、ウズベキスタン・タイ

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。