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『パーソナリティの心理学 パーソナリティの理論と科学的研究』現代の心理学は、心理学的数学が必要になっている(マスクドニード、多文化共生)

 心理学は以下の3つのフェーズで発展してきた。現在はフェーズ3)にある。

フェーズ1)文学的および哲学的段階(シェークスピアやドフトエフスキーの描く人間性の記述)

フェーズ2)組織的観察および理論化の段階。異常行動や病的行動に対する医学的アプローチの段階(フロイト、ユング、アドラーなど)

フェーズ3)数量的および実験的段階

 この本の著者のレイモンド・キャッテルは、フェーズ3)における知能や因子分析、パーソナリティの研究で有名な心理学者だ。多変量解析により、16因子(知能、情感、衝動性、自我強度、自己充足、支配性、大胆さ、繊細さ、空想性、抗争性、不安の抑制、浮動的不安、公共心、猜疑心、狡猾、罪悪感)から性格特性(パーソナリティー)を分析してきた。本書は、その具体的な方法をまとまたものだ。

 キャッテルによる因子分析からの主な発見には、「流動性知能」と「結晶性知能」がある。
 流動性知能とは、どのような論点でも内容でも適用可能な思考能力や推論能力を指す。作業記憶と関係があり、やり方や方法がわからないときに用いる手段として用いる知能であり、遺伝的に受け継がれ、ピークは成人初期でその後は徐々に下降していく。要するに問題解決能力であり、生理学的な知能だ。 
 結晶性知能は、知識の貯蔵や作業仮説、判断機能を指す。学校や仕事、社会生活、人間関係などの経験に基づいた知能が結晶性知能であり、この知能は生涯にわたって増加し、65歳くらいまでは一定しており、その後徐々に下降する。社会的立場や年齢、国籍、文化、宗教によって大きく差異があるのがこの知能だ。この2種の知能は独立してはいるが、お互いに相関関係がある。

 本書には、「流動性知能」と「結晶性知能」の解説はないが、キャッテルは環境と遺伝によるパーソナリティを以下のように定式化している。

 R=f(S.P)

 R:その個人の行動的反応(言ったり、考えたり、行うこと)の性質と程度
 S:個人がおかれている刺激場面
 P:その個人のパーソナリティの特質

 この定式からパーソナリティの次元、特性、測定技術などから、社会問題(例えば、人的資源の満足のいく雇用、有効な宣伝広告、政治指導者の選択、反社会的行動の統制、精神障害の診断と治療効果の測定、結婚や家族問題への助言、社会的趨勢への評価など)の解決を試みようとしている。つまり、現代の心理学は、心理学的数学が必要になっているということなのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。