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『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』コスモスとユニバース、マルチバースと人間原理を整理して理解することの重要性(環境研究)

 人間原理は英語では「Anthropic Principle」とプリンシパルとなっている。原理原則の「原理」ということで、他を必要とせず、なおかつ他が必要とする第一のものを指す。宇宙を観測する人間が存在するのだから、「人間原理」が存在する。

 人間原理を語る上で整理しなければならないのは、コスモスとユニバースの違いだ。コスモスはギリシア語で「秩序があること」を意味し、ユニバースはラテン語で「ひとまとまりのもの」を指す。もうひとつ「マルチマース」という言葉もあるが、これは複数のユニバースを指す。科学者のジェームズ・ラブロックは、宇宙を「ユニバース」とは呼ばず「コスモス」と呼ぶ。「コスモス」は人間が観測し把握することができる宇宙、つまり、人間原理が成立している宇宙、「ユニバース」は観測できないものを含んだ宇宙を示していることになる。例えば、私たちが住んでいる宇宙と別の宇宙があるとしたら、それは人間が観測することは未来永劫できず、存在しているとも言い切れない。したがってそれは「コスモス」ではないということになる。

 偶然の一致をコインシデンスと言うが、いつ、どこで、誰が測定しても同じ値になる基本的な力の強さや、基本粒子の電化や質量の物理量などの物理定数はなぜそのような値になっているのだろうか。もし物理定数が今の値でなければ、人間は存在できず、その物理定数の宇宙は観測することができない。
 また、もし宇宙が今よりずっと年を取っていたなら、この銀河の恒星の大半は、すでに燃え尽きているだろう。逆に、もし宇宙が今よりずっと若かったら、地球の核を構成している鉄や、生物に必要な炭素なども、まだ存在していなかっただろう。となると、人間の存在はなく、宇宙を観測できなかった。
 つまり宇宙は、ある時点で観測者を創造することを見込むような性質をもっていなければならないことになる。「我思う。ゆえに世界はかくの如く存在する」のである。

 「いろいろな可能性があるなかで、宇宙はたまたまこのような宇宙だったのかもしれない」と答える科学者が増えているという。人間原理は、宇宙のすべてを説明できる理論を追求する物理学者のパラダイムシフトを起こしているという。コスモスとユニバース、マルチバースと人間原理、これらを整理して頭に入れておくことは、現代の宇宙物理学を理解するのには重要なことなのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。