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『アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく』小原國芳氏に興味を抱いた(世界の歴史)

 筆者は『印税で1億円稼ぐ』を読んで、100万部売れる本を1冊書くより、100冊で100万部到達を目指す方が志として堅実だ。そうなると書店の棚に自分の名前のネームプレートができるということと、自己啓発本の面白さを知ったという。以降、自己啓発本の研究をはじめ、その成果が本書だ。

 自己啓発本のルーツはアメリカで18世紀に生まれた。かつ読まれているのはアメリカ、日本、スコットランド、韓国ぐらいだという。自己啓発本は「出生指南書」なので、出世したいと思う人と出世しようと思えば出世できる環境でなければ売れることはない。最近の日本で出世を望まない人が増えているということは自己啓発本が売れなくなるということでもある。

 アメリカのベースはプロテスタントのカルヴァン派だ。彼らの考え方には予定説がある。すべての人の運命は神が決めている。死後の天国地獄も神の意志で決められているというものだ。この予定説を本質にもつカルヴァン派の権威は、スウェーデン生まれの科学者、神学者、思想家のエマニュエル・スウェーデンボルグの思想で転換されたというのが、筆者の洞察だ。

 各人が従事する務めや仕事の職業において、正当かつ忠実に行動すれば、その人は善人になれるというニューソートがアメリカに浸透して行った。その土壌の上に自己啓発本が生まれたのだ。政治家、外交官、文筆家としてアメリカン・ドリームの体現者としてアメリカで人気のベンジャミン・フランクリンの『フランクリン自伝』が世界初の自己啓発本として名高いという。ここには立身出世の13の秘訣まとめてある。つまり、努力して成功するのが自己啓発本(自助努力系自己啓発本)だという位置づけとなった。この延長線上には『カーネギ自伝』などがある。最高峰は20世紀後半の『7つの習慣』だ。日本では福沢諭吉の『学問のすゝめ』、松下幸之助の『道をひらく』などがそれにあたる。確かに20世紀の自己啓発本にはこのタイプの本が多かった。

 自助努力系自己啓発本の誕生から100年後に生まれたのが、引き寄せ系自己啓発本だ。夢が「原因」となり、それは必ず[結果」として目の前に現れる。ゆえに、夢を実現すること事態は非常に簡単なことで、ただその夢を見続けるだけでいい。そうすれば、あなたは夢を実現させ、望んだ通りの環境を手に入れることができるという引き寄せ系自己啓発本最高峰のジェームズ・アレンの『「原因」と「結果」の法則』が生まれたという。こうやって、自己啓発本の歴史をたどると自助努力系自己啓発本から引き寄せ系自己啓発本に移り、脳科学の発展によりエビデンスが与えれていくプロセスが時系列で手に取るようにわかる。

 その他、自己啓発本のカテゴリーが次のように紹介されている。

  • ポジティブであると成功する系自己啓発本

  • お金持ちになる方法系自己啓発本

  • 年長者が人生を説く系自己啓発系

  • 日めくり式系自己啓発本

  • スポーツ系自己啓発本

 本書の最後に、「小原國芳先生のこと」と題し、全人教育を説いた玉川学園創始者 小原國芳氏に対する感謝の気持ちが書かれている。人が自己啓発本に抱く好悪は、一途な夢を実現した人を身近に知っているか、あるいはそういう人に素直なあこがれを抱いた経験があるかどうかに依るところが大きく、教育者としての小原國芳氏に抱いた感情が本書を生んだ原動力だという。筆者は玉川学園小中学部の卒業生なのだ。

 私の師匠の糸川英夫氏が戦中に研究室を玉川学園に移していたことから書いた次の文章から点と点がつながり、小原國芳氏に興味を抱くことになった1冊でもあった。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。