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『あちらにいる鬼』全身小説家の異名をもつ井上光晴の映画!

 原一男監督によるドキュメンタリー『全身小説家』を観ているためか、その背景を含めて面白く鑑賞できた。井上光晴と瀬戸内春美は誕生日が同じ、井上光晴は4才のとき、母親が男を作って捨てられた子供だ。彼の母と同じように、瀬戸内春美は4才の娘を捨て男と駆け落ちをした。

 とにかく、この井上光晴という男のモテ方は尋常ではない。しかも、経歴も何もかも全部ウソで塗り固めてあるというツワモノ。全身小説家(フィクション)と呼ばれているのもそれが理由だ。あらゆる年代の女性を褒めちぎり、くどくのである。

 この映画では、井上光晴がストリップを演じた福元館が出てくる。この福元館は大山登山の折に宿泊したことがある七沢温泉の宿だ。宿に泊まったことで知ったのだが、『蟹工船』の小林多喜二が匿われていた宿だという。だからわざわざ福元館で撮影されたのか、実際にそこが井上光晴が主催していた「文学伝習所」の舞台だったのかはわからない。

 『全身小説家』を観た後に、井上光晴の小説を1冊だけ読んだことがある。そこで驚いたのは、巻末にこの映画でも出てくる30年ローンで購入した調布の家の住所が出てくることだ。当時は平気で著者の個人情報を本に掲載していたのだろう。そこを訪ねれば簡単に著者に会うことができた時代なのだ。そのため、この映画でも、女性が自宅を訪ねてきたりする。また、ウイスキーをオールドパーにこだわるシーンがあったり、昭和の匂いが漂う映画だ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。