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『生き物たちが先生だ: しくみをまねて未来をひらくバイオミメティクス』イノベーションの組み合わせを生物の進化から得る方法(異なる要素のコンバイン)
生き物の仕組みを模倣し、ユニークな工業製品などにつなげることバイオメテックスのルーツを紹介した本。
バイオメテックスのルーツは電子顕微鏡の弱点から生まれた。電子顕微鏡は電子線を使い観測するが、顕微鏡のなかを真空の状態にしなければならない。困ったことに真空状態になると、水分や空気がどんどん放出され、ぺしゃんこになってしまう。つまり、電子顕微鏡は微細なものを観察できるが、ぺしゃんこのものしか観察スることができないのである。イカを観察するのに水分のなくなったスルメを観察するようなものだ。
著者である針山孝彦氏(浜松医科大学特命研究教授)は、その弱点に挑戦した。挑戦方法は簡単だ。すべての生物を次から次へと電子顕微鏡に入れたのである。すると、ショウジョウバエの幼虫だけが、ぺしゃんこんならず原形をとどめていた。
なんと、ショウジョウバエの幼虫の身体の表面はネバネバに覆われていたのだ。ショウジョウバエの幼虫に電子線が当たるとネバネバが薄い膜となり、体の水分や空気がでていくことを防いでいることがわかった。このネバネバと同じ機能を、界面活性剤が果たすことがわかり、魔法の液体ナノスーツ溶液が完成した。スーツとは、宇宙の真空状態で宇宙飛行士を守る宇宙服の働きをイメージした命名だ。
ナノスーツ溶液により電子顕微鏡での観察が可能となり、バイオメテックスは本格化した。例えば、日本イモリが窓ガラスや壁にくっつくのは、手足のセタ(剛毛)と接着面との間にファンデルワールス力が働くため。その機能を応用した手袋が「ナノぴた」(帝人フロンティア)だ。このように、生物を観察することで、進化を通じて生まれた特徴を既存の商品と組み合わせ、簡単にイノベーションを生み出すことができる。
本書は、子供向けに書かれた本とされている。しかし、書いてある内容は、最先端のイノベーションを生み出す組み合わせの可能性をルーツとともに教えてくれる貴重な1冊だ。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。