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『水を抱く女』ドイツ人の集合的無意識としての元型

 邦題は『水を抱く女』となっているが、原題は『Undine』となっている。Undineは水の精を意味する。ドイツ語ではウンディーネと読み、この映画の主人公の女性の名前だ。辞書には「ウンディーネは、人間の男性と結ばれることによって魂を得る。しかし、その男性から罵倒されると、妖精のおきてに従って、魂を抜かれ、水に戻らなければならない。また、その男性が他の女性を好きになると、彼の自律性機能を奪ってしまう。すなわち、通常ならば意識せずとも動いている呼吸器官が、自らの意志で命令しなければ動かないにようになり、眠り込むと命令ができないので呼吸が止まり、死に至る。」とある。
 ウンディーネの恋愛映画だが、いつしか彼女は水の精となっていく。この民間伝承は別の形でも何度も映画化されているようだ。16世紀のスイスの医師・錬金術師パラケルススの著書『妖精の書』に登場する水の精とのことなので、キリスト教がヨーロッパに浸透してからの神話ということになる。しかし、戯曲や演劇、バレイ、オペラ、映画などになっていることから、ドイツ人の集合的無意識として元型となっているのかも知れない。単にドイツ人男性への戒めとは思えない。
 水の中に潜んでいた巨大ナマズの妖精がウンディーネとも考えれるが、魂のようなものとしてもストーリーに違和感はなかったと思う。ドイツ映画らしい映画だ。

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