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『日本社会の移民第二世代 エスニシティ間比較でとらえる「ニューカマー」の子どもたちの今』ハイブリッド型が理想(環境研究)

 本書は移民2世、つまりニューカマーの子どもたちに焦点を当てたもので、ベトナム・カンボジア系、中国系、ブラジル系、ペルー系、フィリピン系と著者が役割分担してまとめてある。700ページの大著だが、各章毎に小括があるため、そこを基軸に読むと全体が見渡せる。

 ユニークなのは、移民2世のアイデンティティー形成はエスニシティーを放棄して日本人に同化せず、以下のように分類されることを示している点だ。

①出身国文化指向型:学校の同化圧力に抵抗して、エスニシティーを強調し、日本の学校や社会に反発して対抗文化を形成する人々。
②ハイブリッド型:エスニシティ維持と日本人化の間のバランスを保とうとする人々。
③マージナル型:出身国にもエスニシティにも帰属意識をもてない人々。

 特にハイブリット型では、外国人支援を行う地域の学習支援教室やボランティア団体で出会う日本人支援者や移民背景を共有する子どもたちにより、エスニシティーが維持され、同時に日本の教育システムにつながる重要な役割を果たしているという。つまりバランスを求めるのであれば、熱心な支援者(それぞれの文化をつなぐ「焼鳥の串」)などの存在が不可欠なのである。

 移民大国のフランスではホームグロウン・テロリズム(移民2世のテロなど)が社会問題となっているが、①が極端な形でセグリゲーション化したり、③が過激思想と結びつたりすることなどが原因のひとつとも考えられるが、日本が多文化共生につながる②にソフトランディングするためには、やはり、それぞれの文化をつなぐ「焼鳥の串」の機能を有する人材が必要になることだけは確かだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。