幽顕一如

私は、熊野神社の神職と日本救急救命士協会の会長、救急救命士を養成する大学の教授をしています。神職と救急救命士は、まったく異質な仕事のように見えますが、「命と向き合う」という意味において、実は密接に絡み合っているのです。

 

神道において「顕」とは、目に見える世界。「幽」とは、目に見えない世界をいいます。私にとって救急救命士は「顕」における仕事であり、神職は「幽」における仕事です。この二つの職には「救い」という共通点があります。「目に見える世界」と「目に見えない世界」の両方の立ち位置から「救い」をおこない、この世を貧困、病気、戦争、災害のない穏やかな世の中にしていくのが、私がこの世に生を受けた使命だと感じています。「幽顕一如」とは、「目に見えない世界」と「目に見える世界」は表裏一体であるということです。

 

古代日本人は、「物質の世界」と「霊の世界」の調和をとりながら生活をしていました。しかし、時代の変化に伴い物質文明が急速な発展を遂げ、いまや身の回りには物が満ち溢れ「目に見える世界」のみを絶対視する社会になってしまいました。経営においても、可視化できる数字や科学的エビデンスを集めて新規事業の立案や計画が推進され、「目に見えない存在」や「霊性」を第一に考え、それを重んじるという日本精神が失われています。世の中には、エビデンスの無い世界も存在します。それが神様の世界です。経営に携わる方々には、義理人情に厚い経営や生き方とはどうあるべきかをぜひ考えてほしいと思います。

 

よろしければサポートをお願いいたします。いただきましたサポートは、赤ちゃんの命を守る活動。鎮守の杜の維持や植樹。日本の伝統文化を守るために使わせていただきます!