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「有機の里づくり」に取り組む 大分県臼杵市

『市民の健康、とくに子どもの健康に「食」から取り組む』
臼杵市では、市長はじめ市職員、市会議員、農家、市民が共有できるコンセプトがはっきりしていたことで、結果として有機農業を推進できたと思います。


なぜ、有機農業を推進するのか

大分県臼杵市は、2005年の合併以来、『市民の健康、とくに子どもの健康に「食」から取り組む』ために、学校給食に有機農産物(ほんまもんの野菜)を導入しています。
これは、有機農業推進法(2006年12月施行)に先立つ施策で、2009年10月には「臼杵市有機農業推進計画」を策定し、地産地消、地域の風土を活かした農業の推進と、生産者と消費者の相互理解による有機農業の推進に取り組んでいます。

土づくりを基本に有機農業を推進

「臼杵市土づくりセンター」(見出し写真)で製造する草木を主原料とした完熟堆肥「うすき夢堆肥」による土づくりを基本とした環境保全型農業・有機農業を進めています。
ほんまもん農産物認証制度」を制定し、うすき夢堆肥などの完熟堆肥で土づくりを行い、化学肥料と農薬を使わずに生産された農産物を市長が認証し、市民の健康増進と持続可能な農業の確立を目指しています。

有機の里うすき「ほんまもん農産物」ウェブサイトより

学校給食に「ほんまもん農産物」を

2000年に合併前の臼杵市で、学校給食を自校方式からセンター方式に変更したことがきっかけになりました。
自校方式を続けてほしいという住民運動もあり、当時の後藤國利市長による「センター方式への移行を機に、自校方式より質の良い給食にしていこう」という方針のもと、今まで以上に地域の旬の野菜を使っていくために「給食畑の野菜」と命名し地産地消の給食を始めました。
当初から有機農産物を想定していたのではなく、「おじいちゃんおばあちゃんが家でお孫さんに食べさせる野菜をそのまま給食に持ってきてもらう」という考え方で、地元の農家が作った野菜を学校給食に使うことを目指しました。

地元農家の理解を得ながら有機農業を推進

地産地消の有機農業を推進するために、地元の直売所に野菜を出荷している小規模農家を中心に有機農業を勧めました。そして2008年、国の有機農業推進事業への応募をきっかけに「給食畑の野菜」有機農業推進協議会を立ち上げ、化学肥料、合成農薬を使わない野菜を学校給食に使っていくことにし、価格も市販の25%増で取り扱うことを農家と農協と市で決めました。
慣行農業、専業農家の方々には、「なぜ臼杵市が有機農業を推進していくのか」を説明し、慣行農家、有機農家の分け隔てなく市の農業施策を実施しました。

臼杵市では、「有機の里づくり」を掲げて有機農産物の生産から消費までの支援体制を整えました。そして『食文化創造都市 臼杵』として、土づくりセンター、地域認証、学校給食を軸とした地元での販路確保、アンテナショップ、農産物の加工とブランド化などを通して、地産地消・循環型の有機農業を推進しています。

なぜ、自治体が主体となって有機農業を推進できたのか。
有機農業の推進を目的としたのではなく、結果として有機農業が推進できたと思います。

市長はじめ市職員、市会議員、農家、市民が共有できるコンセプトがはっきりしていることは、自治体が有機農業を推進するには大切です。

参考文献

谷口吉光編著(2023)『有機農業はこうして広がった: 人から地域へ、地域から自治体へ』、コモンズ

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