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緑肥間作の導入は、土壌動物相を豊かにする

緑肥間作の導入の利点として、主作物を栽培しながら、土壌侵食の防止、地表面の保護、土壌動物の餌や生息場所となる有機物の生産補給などに加えて、土壌動物相、とくに捕食者(天敵)が多くなることを紹介します。


緑肥間作とは

緑肥作物には、マメ科のレンゲ、クローバ、青刈り大豆、ベッチ類などや、非マメ科作物の青刈りエン麦、青刈りライ麦などがあります。
一般に緑肥作物を野菜栽培に利用する場合、野菜の栽培前または栽培後に緑肥作物を栽培しすき込みます。しかし、主作物の栽培期間中に畝間に緑肥作物を導入する方法(緑肥間作)も知られています。この場合、主作物との間で起こる養分や水分の競合を避けるために、緑肥作物を適宜刈り取って敷き草に利用(刈り敷き)します。

緑肥間作の導入が栽培環境に及ぼす効果を検証

農地に生息する土壌動物や微生物などのさまざまな生物の力(機能)を活用する持続的な農業を行うには、農地といえども、生産機能を低下させないかたちで多様な生物が棲める環境を形成することが必要です。

緑肥間作の導入が、土壌動物群集の豊かさや土壌環境、作物の生育・収量に及ぼす影響を比較検討する研究を行いました。ここでは特に、2003-05年に実施した緑肥間作の導入(イタリアンライグラスと赤クローバの混播)の影響を、土壌動物群集の豊かさとそれに伴う土壌理化学性の変化について紹介します。

大型土壌動物群集との関係

採集された主な動物群は、ミミズ、クモ、ヤスデ、ムカデ、甲虫(オサムシ、コガネムシ、コメツキムシ、ハネカクシなど)などでした。生息密度は、主作物の条間部分と緑肥間作を導入した通路部分ともに緑肥処理で高くなりました。個体数の割合を比べると、植食者とされるコガネムシ類の割合は、04年の通路部分を除き両処理で有意な差はみられませんでした。捕食者の割合も、条間および通路部分ともに両処理で有意な差はみられませんでした。しかし、通路部分では、3か年を通じて緑肥処理で捕食者の割合が高い傾向にありました。

緑肥間作導入の時期と刈り敷き量の関係および主作物の生育・収量との関係については、すでに紹介しました。

品質では、スイートコーンの子実のアワノメイガ幼虫や秋ダイコンのコガネムシ幼虫の食害が、緑肥処理で軽減されました。

緑肥間作導入の利点

導入の利点として、下記のことなどがあげられます。

①栽培環境が多様になり、土壌動物の餌や生息場所として利用される有機物が還元されるため、土壌動物群集が豊かになること
②土壌動物群集が豊かになることで、有機物の分解が促進され、結果として主作物の収量が向上すること
③生物群集が豊かになることで、害虫の被害が軽減されること
④土壌の物理性が改善されること

さらに、緑肥間作の導入によって、主作物が利用しない養分を緑肥作物が利用し有機物として畑地に還元することができ、より環境保全的な栽培法でもあります。

ぜひ、緑肥間作を試してください。
年数を重ねることで、主作物の収量や病害虫の発生などに変化がみられ、畑にそなわる新たな“力“を発見できると思います。

参考文献

藤田正雄・中川原敏雄(2006)緑肥間作の導入が栽培環境や作物の生育・収量に及ぼす影響. 自然農法,57: 15-16.
藤田正雄・中川原敏雄・藤山静雄(2006)緑肥間作の導入による大型土壌動物群集の変化とそれに伴う土壌理化学性と畑作物収量の改善. 有機農業研究年報, 6:136-152.

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