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有機物の分解は微生物と動物の相互作用 ワラジムシの摂食活動

落ち葉などの有機物の分解に関与するワラジムシ類は、畑の生物相の豊かさをみる指標動物として捉えることができます。


有機物の分解過程に微生物と動物が関与している

大きさや餌の異なるさまざまな土壌動物が土のなかで生活しています。地表に堆積する落ち葉などの有機物は、土壌動物に生活の場を与えるとともに、それ自体が餌となります。
ヤスデ類やワラジムシ類のような動物はこれらを食べ、未消化の状態で排泄します。この過程で、食べられた落ち葉などの有機物は、細かく、こなごなに砕かれます。そして、食べ残された有機物や糞は、それを餌とする微生物(細菌類、菌類)の生活と大きく関わっています。

ワラジムシの摂食活動が微生物のはたらきを活性化する

ワラジムシが落ち葉の分解過程に及ぼす影響を調べるため、同量の落ち葉に頭数(0-10頭)を変えて飼育した実験があります。ワラジムシがいると、有機物の分解速度の指標となる微生物の呼吸量が最大で1.9倍に増加し、この増加傾向が長期間持続しました。しかも、数が多いほどこの傾向が強くみられました。
この原因として、ワラジムシが落ち葉を食べることによって、落ち葉は細かく砕かれ、単位面積あたりの表面積が大きくなり、微生物が増殖できる生活空間が増加したことが考えられます。また、表面の菌糸の網目がワラジムシによって壊されることで、他の菌類や細菌類の活動が促進されることも考えられます。さらに、ワラジムシの排泄物に含まれる窒素などの栄養分が微生物の活動を活発にします。

ワラジムシにかみ砕かれた落ち葉の断片は、ワラジムシの消化管内で、管内に生息する細菌やワラジムシの消化酵素のはたらきを受けます。
ミミズ類と同じように、消化管を通過することで、落ち葉の断片はさまざまな生化学反応を受け、物理的、化学的にも異なる物質に変化します。
実際の落ち葉の分解過程はさらに複雑で、そこには食べ方の異なるさまざまな微生物や動物が関与しています(図)。

図 有機物の分解に関与する土壌動物(藤川 1973)

指標動物としてのワラジムシ

体長10cm内外で、7-8対の脚と尾端に1対に短い突起物をもち、体を丸めることができないワラジムシ(草鞋虫)のなかまを公園や庭で見た方もおられると思います。
ワラジムシ類はカニやエビと同じ甲殻類に属し、海で生活する種類が多いなかで数少ない陸上動物です。水分要求度が高く、暗く湿った場所で生活しています。地表面の落ち葉などに産卵し、地表の有機物堆積層で一生を過ごします。主に、湿気のある落ち葉などの有機物を食べています。

畑で見られることは珍しく、不耕起・有機農業畑では見られますが、慣行農業畑ではほとんど見られません。このことから、ワラジムシ類を畑の生物相の豊かさをみる指標動物として捉えることができます。

※土壌動物や微生物による有機物の分解機能は、下記も参照ください。

参考引用文献

藤川徳子(1979)『自然農法研究シリーズ第3集 土壌生物を考える』, 環境科学総合研究所.
藤田正雄(2006)土を育てる生きものたち(4)有機物の分解は微生物と動物の相互作用.ながの「農業と生活」, 43(4):9.
布村昇(2019)45年間ワラジムシを研究して「とやまと自然」42(3)1-8.富山市科学博物館.


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