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商人のDQ3【47】カンダタがふたり

「ハ〜ッハッハ! 怪傑カンダタがいる限り、この世に悪は栄えない!」
「許してくれよ! な!」

 ついに、正義と悪。ニセモノとホンモノのカンダタが対決する日がやってきました。

「偽者呼ばわりが嫌でよ、バハラタに根城を変えたのになんでバレた?」
「ハッハッハ! 天知る、地知る、カンダタ知る!」

 夢の対決は、どのように実現したのでしょうか。順に見ていきましょう。

※ ※ ※

「ちょっと、修行中に悪いけど。シャルロッテが大変なの」

 ここはランシール。バハラタのはるか南の大陸です。アリアハンのせいで現実の世界よりも西に位置をずらされたオーストラリア。

「マリカさん?」
「何かあったようだね、話してみたまえ」

 アッシュ少年と怪傑カンダタです。シャルロッテたちの出発後、残留組はマリカが幽霊船に関する調査を。アッシュ少年がある特別な修行をそれぞれ行っていました。怪傑のほうのカンダタは、若き勇者から懇願されてコーチ役を務めています。そのための修行場として、ランシールへ夢渡りしてたのです。

「シャルロッテさんも、ああ見えて勇者の素質があると思ってました」

 マリカから事情を聞いて、アッシュ少年はすぐに救出作戦への参加を表明します。かつて自分も助けられた、困った人を放っておかない優しいシャルロッテ。

「今度は、僕が助ける番です」
「勇者を名乗りながら、植民地主義の片棒を担ぐ他国の国家勇者に。きみのお父様も心を痛めていたよ」

 バスコダもまた、ポルトガの実質的な国家勇者。彼の暴挙は正義の怪傑として、もちろん見過ごせません。

「父さん…勇者オルテガに、会ったことがあるんですか?」

 まるでオルテガのことを知るような怪傑カンダタの口ぶりに。少年の表情が変わります。

「前に、オルテガの従者だったらしいホビットから聞いた話だよ」

 筋の通った説明だったからか、アッシュ少年もマリカもそれ以上はツッコミません。

(ふう、危ないところだったよ)

 内心、胸を撫で下ろす怪傑カンダタ。やっぱり怪しいです。

「あたしは、次のところへ飛ぶから。まずはクワンダたちと合流してね」
「分かりました。マリカさんもお気を付けて」

※ ※ ※

「アルスラン王! バハラタの街がポルトガ軍に占領されて、シャルロッテが捕まってしまったの」

 マリカが次に飛んだのは、オリビアの岬付近で橋の建設工事をしていたモスマン帝国軍の天幕。橋もちょうど完成し、ロマリアから陸路でバハラタへの道がつながったところでした。

「いつぞやの夢渡りの娘か。バハラタは、我らにとっても重要な取引相手。ポルトガの暴挙を黙って見ているわけにもいかんな」

 驚くほどすんなり話が通って。アルスラン王の指揮でモスマン帝国軍は、ポルトガ軍をバハラタから追い出す作戦を実行することになりました。

 バハラタへの陸路開通の影響で、後日こんなことも起きました。

なんでも 岩山に
東の国へ通じる 洞窟があるって……。
その話を聞いて
あたしたちも 東に行こうとしたことがあるわ。
次は 東の国にも劇場を開こうって。
でも 洞窟は途中でふさがっていて ノルドという
ホビットに会えただけなの。
そんなわけで 私が
東に行けなかった ここの座長です。

 よかったね、座長さん! これでバハラタに行けるよ。彼ら一座がアッサラームのベリーダンスをバハラタに伝えた結果が、ボリウッドダンス?

 なお、この部分は作者が適当なネタを当てがっただけの創作設定です。歴史的根拠ありません。

※ ※ ※

 こうして、バハラタでさらわれたシャルロッテやグプタの恋人タニア、その他ポルトガ軍に奴隷として連行された人々の救出作戦が急ピッチで進んでいきます。同時に、モスマン帝国軍によるバハラタ解放作戦も。

「クワンダさん、僕も助けに行きますからね」
「アッシュ、礼を言うぞ。元はと言えば俺のミスだ」

 バハラタは危険なため、クワンダとアミダおばば、アントニオじいさんは近場のダーマ神殿に宿をとっていました。ここには独自の武僧集団がおり、地理的に遠いこともあってヨーロッパ諸国もまだ手を出せていません。

「うわさのダーマスパイとやらは、ついぞ見かけなかったのう」

 流派は違えど、武闘家として。アントニオじいさんは武僧たちとの交流や組み手を通じて、新たなインスピレーションを得たようです。アクロバットとは、すなわち「空」そのもの。

(クワンダおじさま、何でここに!?)

 神殿の壁の影に隠れて、銀髪に蒼い瞳の娘が傭兵クワンダを見ています。

「…ん?」

 視線に気付いて、振り返るも。そこには誰もいません。

「まさか、な」

 クワンダの脳裏に「フィギュアスケーターに転職したい」と言って旅に出た姪っ子の顔が浮かびました。彼女は確か踊り子でしたが、以前会った時は我流で武闘家のような技を身につけていて驚いたものです。

「怪傑カンダタよ、おぬしと共闘する日が来るとはのう」
「キミこそ、もう正義の魔法おねえさんが板についてるよ」

 モシャスなのか、アバター体を変身させているのか。アミダおばばは最近若い頃の姿に変身している時間が増えました。シャルロッテやマリカと夢の中で人魚姿に変身してからのことです。ピチピチギャルに転職?

「集まったわね。じゃあ、シャルロッテを助けに行くわよ」

※ ※ ※

 冒頭に戻ります。結果から言うと洞窟への潜入は拍子抜けするほど簡単でモヒカン頭のカンダタ子分たちが「オレたちの仲間になりに来たのか?」と問うことさえできず、あの手この手で誘い出されて各個撃破。お手洗いに行く隙を突かれたり、アミダおねえさんに色仕掛けされたり。
 今までがハード過ぎたのでしょう。ロマリアを襲ったゾンビ軍団や、魔王軍でも屈指の実力者ヒミコを相手に生き延びてきた冒険者たち。いきなり、ポルトガ軍の船から砲撃も受けました。それらに比べればベリーイージー。

タニア「助けて勇者さん! 私バハラタの街からさらわれたタニアです。
グプタ「突き当たりの壁に牢を開けるレバーがあるはずだ。

「ああタニア! 
「あなた! 
「私たち帰れるのね! 
「かえったら結婚しよう!
「ありがとう、勇者さん!

 捕まっていたタニアとグプタ、奴隷の少女や子供たちも難なく救出されます。しかし、そこにあの男が。

タニア「きゃーっ!
盗賊カンダタ「ふっふっふ。俺様が帰ってきたからには逃がしゃしねえぜ!
タニア「助けて勇者さん!

 そこで我らがヒーロー、勇者アッシュと怪傑カンダタが息のあったセリフ回しで前に出ます。

「あいつは僕たちに任せて!」
「早く逃げたまえ!」

タニア「このご恩は一生忘れません!

「うぬぬ、誰か知らんが…」

 本物のカンダタとは、みんな初対面です。でも盗賊カンダタには、ひとりだけ一目で分かる男がいました。怪傑カンダタ。

「オレ様のニセモノめ! 今日こそやっつけてやる!!」


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