2022年 第14回 TAMA映画賞授賞式 雑記

大規模改修を終えたパルテノン多摩 大ホールに、4年ぶりに「TAMA映画賞授賞式」が帰ってきた。
本稿は授賞式を観た私の簡単な個人的雑記である(受賞者の方々のコメント等は様々なメディアで報じられているので、そちらを参照されたし)。

11月26日に開催された今年の授賞式を華々しく盛り上げたのは、何と言っても「1126の日」の主役・最優秀男優賞の佐藤二朗氏であったのは間違いない。

最優秀作品賞は『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督)と『LOVE LIFE』(深田晃司監督)の2作であったものの、実質は、『さがす』(最優秀新進監督賞・片山慎三監督、最優秀男優賞・佐藤二朗氏、最優秀新進女優賞・伊東蒼氏)と『流浪の月』(李相日監督、最優秀男優賞・松坂桃李氏、最優秀女優賞・広瀬すず氏、最優秀新進男優賞・横浜流星氏)の年だったと言える。

その2作と『LOVE LIFE』、それに『PLAN 75』(早川千絵監督、最優秀女優賞・倍賞千恵子氏)と重いテーマの作品が多かったとはいえ、受賞作全てが劇映画であり、ドキュメンタリー映画が含まれなかったのは、やや残念な気がした。

受賞コメントも、昨年はコロナ禍における映画作りやハラスメントなどの問題に言及する登壇者が多かったが、今年はそれらに関するコメントはなかった。
コロナ禍での映画作りについては、2年以上経過したことによって、ある程度ウィルスに対する知識や対処法がわかってきたし、その制限下での制作ノウハウが積み重なってきたことを示唆するのだろうと思う。

ハラスメントなどの状況は昨年より悪化というか、被害者からの告発が相次ぎ問題が顕在化した。
今年の授賞式でこれらに対するコメントがなかったのは、「見て見ぬふり」や「触らぬ神に祟りなし」ということではなく、「言葉ではなく行動で示す」という思いがあったからではないか。
ハラスメントが顕在化したことに加え、是枝裕和監督らを中心に「日本版CNC」の発足を求める声が上がるに至り、ようやく制作側が重い腰を上げて本格的な対策に動き出そうとしているのを「言葉ではなく個人個人の行動で改善を支援する」という本気の覚悟の表れではないか、と期待している。

期待という意味では、佐藤二朗氏の「世間ではバイプレイヤーと言われている自分が最優秀男優賞を獲ることは、他のそう呼ばれている方々の励みになる」といったコメント(決して彼はおちゃらけていただけではない)は、完全に同意するところである。

また、今年は、『メタモルフォーゼの縁側』(狩山俊輔監督)での「芦田愛菜・宮本信子及びスタッフ・キャスト一同」に贈られた特別賞で狩山監督とともに登壇した宮本信子氏、最優秀女優賞を受賞した倍賞千恵子氏と、長年映画界で活躍されてきたベテラン俳優が登壇されるのを目の当たりにして、映画は決して若者だけでなく、幅広い層の人々の物だと改めて実感した。

また何人もの受賞者の方々が、「またここに戻ってこられるように精進したい」とコメントしていたが、(偉そうな物言いで恐縮だが)是非そうあって欲しいし、その時もまた私は客席から拍手を贈りたいと思った。


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