舞台『りぼん、うまれかわる』

NAPPOS PRODUCE『りぼん、うまれかわる』(山崎彬脚本・演出。以下、本作)を観ている間、ずっと「懐かしい感じがするなぁ」と思っていた。
「懐かしい感じ」を具体的に説明すると、私が20代~40代半ばまで観ていた「演劇集団キャラメルボックス」(以下、「キャラメル」)の芝居を想起させたからであるが、本稿を書くために調べたところ、本作をプロデュースしている「NAPPOS UNITED」は、「キャラメル」の仲村和生氏が設立した演劇の企画・製作会社らしく、だから、そんなに的外れではなかったようだ(ただ、本作に「キャラメル」所属の阿部丈二氏が出演していたことの影響も否めないが…)

本作は、元乃木坂46の深川麻衣さん主演のファンタジーで、タイトルのとおり「前世/うまれかわり」がテーマなのだが、タイトルとは違い、深川麻衣さん演じる主人公・並盛りぼん自身が生まれ変わるわけではない。
本作は、簡単に言うと「前世で縁のあった人たちが生まれ変わり、現世で出会い直す」物語である。

私は深川麻衣さんを映画(『パンとバスと2度目のハツコイ』(今泉力哉監督、2018年)、『おもいで写真』(熊澤尚人監督、2021年))でしか観たことがないので、詳しくはわからないのだが、とにかく彼女の可愛い魅力を前面に出したような芝居だった。

ただ、芝居的にはゴチャゴチャしている感じが否めず、「そんなにハッスル(死語)しなくても…」と思ってしまったのだが、それは私がイイ年齢のオヤジだからという理由が大きいが、物語が整理されていないからというのも一因ではないかと思う。

特に、りぼんの婚約者にまつわるエピソードは必要だったのだろうかとも思う(「アカウントを削除させられて連絡がつかなくなった」程度の「障害」のために、あの時間は長いような…。失礼ながらちょっと飽きてしまった)。
まぁ、パンフレット等によると、今後シリーズ化も視野に入れているとのことで、その布石の意味もあるのかもしれず、本作だけで判断はできないのだろうが…

ただ、冒頭からナレーションだと思われていた語りが、ちゃんと登場人物である肌篠天(清水由紀)のセリフとストーリーに繋がっているのは、よくできていると思った。彼女のシーンをもっと落ち着いたトーンで作れば、芝居全体の「緩急」になったのかもしれない(素人が偉そうに…)。


…と、ここまで考えて、ハタと気がついた。

先に「並盛りぼん自身が生まれ変わるわけではなく」と書いたが、「生まれ変わり」は「前世/現世/来世」だけを指すものではない。
「心機一転」も「生まれ変わり」の範疇だ。

りぼんは、「前世/現世」にまつわるあれこれに関わったことによって、別れや新たな出会いを経験し、「心機一転」「生まれ変わった」のである。

つまり、タイトルどおりのお話だったのである。


おまけ

観劇中、ずっと「キャラメル」を想起していたこともあり、どうしても比較してしまうのだが、そういえば「キャラメル」では「生まれ変わり」をテーマにした芝居は(個人的には)思い浮かばない。
「キャラメル」恒例の夏のツアーでは「幽霊」が出てくることが多く(といっても「ホラー」ではなく「ファンタジー」)、それが誰かの体に乗り移る(念を押すが「ファンタジー」)ことはあったかもしれないが、「(幽霊であっても)あくまで個人であり、固定の人格」であり「現世の話」というスタンスだったように思う。

「幽霊」といえば、私が初めて「キャラメル」を観た、1991年の『ナツヤスミ語辞典』も好きだし、何より1992年に紀伊国屋ホールで観た『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』初演の衝撃は忘れられない。

もう何年も「キャラメル」を観ていなかった私だが、2019年5月という時期ハズレに突如『ナツヤスミ語辞典』を上演するというので、嬉しさ半分不安半分で観劇したが、その数日後に不安が的中してしまった…
そして、最近、2021年12月に『サンタクロースが歌ってくれた』で復活するというニュースを聞いた。とても嬉しくなった。


メモ

本作は、2021年6月26日の夜公演を東京・六本木トリコロールシアターで観た。
当日は、朝10時からポレポレ東中野で映画『へんしんっ!』、13時から渋谷・PARCO劇場で舞台『首切り王子と愚かな女』、18時から本作…と、怒涛のハシゴをした。
奇遇だが、2本の舞台はともにファンタジーだった。






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