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就活生がChatGPTとフェルミ推定・ケースの壁打ちをしてみた

この記事は慶應理工アドベントカレンダー2022の10日目の記事です。

9日目の記事はこちらから。

自己紹介

私は慶應義塾大学大学院修士1年のPeterです。現在は情報系としてAIの研究をしています。今回は後輩である企画者に懇願されて仕方なく記事をつくっています。結局締切の2022/12/10(土)23:59までに終わらなかったのはすみません…。

実は過去にもサークルのアドカレにて記事を書いたことがあります。4年前の黒歴史をここで晒します。ぜひこちらも見てください。

また、私は現在就活中で志望業界はITとコンサルティングです。ITに関しては言わずもがな研究分野であるAIやソフトウェアエンジニア系の企業を志望しています。

一方でコンサルティング業界に関しておそらくこの記事を見ている人の中でピンと来ていない場合もあるかと思います。コンサルティングの意味としては以下の通りです。

コンサルティングとは、相手の抱える課題に対して解決策を示し、その発展を助ける業務のことを言います。簡単に言うとクライアント(=顧客)の困りごとを解決する仕事のことです。

そのため「企業のお医者さん」と例えられることもあります。彼らのクライアントは、各業界の民間企業だけでなく、官公庁や公的機関も含まれます。

コンサルティング業界は企業の課題への解決策の提案(解決資料やシステム)を商品としています。そしてその商品を考えることがコンサルタントの仕事であるため、「人」こそが商品とも言うことが出来ます。

【業界研究|コンサルティング】コンサルティング業界とは何かから選考対策までを解説

こちらの引用元にもある通り、コンサルティングは「企業のお医者さん」ということで、企業が抱える「症状(=課題)」に対して「お薬を処方(=解決策の提案)」することになります。

ここでいう「症状」は企業が把握しているものだけではなく、企業が把握していなかった「本質的な症状=(真の課題)」を「企業のお医者さん=(コンサルティング)」が見出したうえで適切な「お薬を処方」をすることになります。

そのため、コンサルティングには課題解決能力が求められ、機械では対処することが難しいものとなっています。

また、コンサルティングといっても様々な職種があり、例えば

  • 戦略コンサルタント

  • 総合コンサルタント

  • ITコンサルタント

  • 人事コンサルタント

  • ビジネスコンサルタント

などがあります。私はこの中で特にITコンサルタント(=ITを用いた課題解決策を提示するコンサルタント)を希望し、現在就活を行っております。

一般的なコンサルティング業界の選考フローとしては

  1. エントリーシート(ES)・Webテスト・録画面接

  2. グループディスカッション(GD)

  3. 面接複数回(フェルミ推定やケース面接含む場合がある)

  4. ジョブ選考

  5. 最終面接

となっています。面接の中にフェルミ推定やケース面接が含まれているのが特徴です。最近では商社などもケース面接を導入しているようです。一方で、理系職ではGDをはじめとするこれらの選考フローはおそらくほぼないと思われます(基本的には理系職は技術スタックが求められますね)。

次のセクションではフェルミ推定やケース面接について紹介していきます。

フェルミ推定について

フェルミ推定とは

フェルミ推定とは「一見予測することができないような数値を、論理的思考をもとにその値を概算することです。

フェルミ推定の例題としては以下があげられます。
本当は実際の選考を受けた企業の問題を提示したいところですが、公平性を保つために公開することはしません。

『日本の電球の市場規模はどのくらいでしょうか?』

過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題

このような一見検討がつかないようなものの数や市場規模に対して、論理的に立式し組み立てることで概算することがフェルミ推定となります。

基本的な解き方

フェルミ推定の基本的な解き方は以下の5Stepです

  1. 前提確認

  2. 立式

  3. セグメントテーション

  4. 数値代入

  5. 検証

それぞれに対して『日本の電球の市場規模はどのくらいでしょうか?』という例題に合わせて説明していきます。

Step1の前提確認ですが、こちらは言葉の定義などを定める形です。例題の場合ですと

  • 電球を家庭用電球とする

  • 市場規模は年間とする

  • 地域は日本国内とする

などが考えられます。この前提確認をすることでのちの立式が変わってくるのであいまいな言葉などはしっかり定義していきます。

Step2の立式ですが、ここから実際に数値を求めるための立式をしていきます。例題の場合ですと、

(電球の市場規模)=(日本の世帯数)×(1世帯が1年間に購入する電球の個数)×(電球の平均単価)

と立式することができます。なお、立式は必ずしも1通りではないので、自分が数値計算しやすいかつ論理的に導けられるような立式をすることが必要です。

Step3のセグメントテーションですが、こちらはStep2で立式した各因数に対して妥当性をだすために、さらに分解する作業になります。
例題の場合、セグメンテーションの例として、「大世帯」「小世帯」とわけることができます。世帯でわけることで(電球の個数)をより精緻化することができます。

Step4の数値代入ですが、上記のStep2、Step3で立式・セグメンテーションした結果をもとに、計算していきます。

Step5の検証ですが、実際に推定して数値の妥当性を評価します。こちらは時間があった場合に行えたらBetterです。妥当性の評価方法としては、一人当たりの消費額などに落とし込んで現実性があるかどうかを見ています。

実際に上記の『日本の電球の市場規模はどのくらいでしょうか?』という問題に対して私がフェルミ推定を行ったときのノートを公開します。

実際に私がフェルミ推定したときのノート。このときは7200億円と推定した。実際の市場規模はもっと小さいと思われるのでこの時は精度が甘かった。

正直このときはまだフェルミ推定に苦手意識があったので精度としては甘かったです…。最近はまだましになっているかなと思っています。

ケース面接について

ケース面接とは

ケース面接とは、『特定の課題が出され、一定時間自分で考えたのち、面接官に回答する』ものです。例題としては、以下のような課題が出されます。

東京からカラスを減らすためには?

東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート―50の厳選フレームワークで、どんな難問もスッキリ「地図化」! 「東大生が書いたノート」シリーズ

基本的な解き方

ケースの基本的な解き方は以下の5Stepです

  1. 前提確認

  2. 現状分析

  3. 課題特定

  4. 施策立案

  5. 施策の評価

それぞれに対して『東京からカラスを減らすためには?』という例題に合わせて説明していきます。

Step1の前提確認ですが、フェルミ推定同様に言葉の定義のほかにこの課題の背景や目的、目標などをすり合わせていきます。特に

  • クライアント(課題の依頼者)

  • 目標の具体化(売り上げをx%向上させる)

あたりは明確にする必要があります。今回の場合ですと、

  • クライアントは東京都政府

  • 目標は東京に生息しているカラスの個体数を減らす

Step2の現状分析ですが、ここから実際に課題に対して分析をしていきます。ここで思考を網羅的に考えるためにフレームワークを適用していきます。例えば、

  • 3C分析:需要を分析する

    • Customer(市場・顧客)

    • Competitor(競合)

    • Company(自社)

  • 4P分析:自社の強み・弱みを分析する

    • Product(製品・サービス)
      Price(価格)
      Place(販売場所・提供方法)
      Promotion(販促活動)

  • AIDMA:消費者の購入までのプロセスを分解し分析する

    • Attention(注意)

    • Interest(関心)

    • Desire(欲求)

    • Memory(記憶)

    • Action(行動)

などが挙げられます。フレームワークはあくまでも補助的に思考を整理するために用います。それぞれの課題に適したフレームワークを適用します。

今回の場合ですと、上記のフレームワークは難しいので、「直接的または間接的に個体数を減らすか」で考えることができるかと思います。また、「衣食住」の観点で考えるといいかもしれません。

Step3の課題特定ですが、現状分析した結果、どこがもっとも課題として生じているかどうかを見つけ出します。ビジネスですとどこのターゲット層に対してアプローチが足りていないのかを現状分析から特定します。

今回の場合ですと、「カラスはコロナ禍によって住宅街のゴミを餌として繁殖している可能性が高い」ことが一番の原因として考えれます。

Step4の施策立案ですが、Step3で特定した課題に対して実際に施策を立案します。今回の場合ですと、

  • 家庭用ごみ箱をより厳重にする

  • ごみ収集車を増やしてゴミを素早く処分する

などが考えられます。

Step5の評価ですが、Step4で出した施策に対して、定量的に評価していき優先度をつけていきます。主な評価の仕方ですが、

  • インパクト(実際に効果があるか)

  • 実行可能性(技術的に可能か、短期間で可能か)

  • 費用面(マイナス面はないか)

などが考えられます。今回の場合ですと、ごみ収集車よりも家庭用ごみ箱を厳重にすることがより効果的であると言えます。

実際に上記の『東京からカラスを減らすためには?』という課題に対して私がケース対策を行ったときのノートを公開します。
実は最初に取り組んだケース対策がこの課題ですので、クオリティが全然低いです…

実際に私がケース対策したときのノート。前提確認や現状分析を行っている。
実際に私がケース対策したときのノート。課題特定や施策を出している。

ChatGPTとケースの壁打ちをしてみた

壁打ちとは

ここでの壁打ちとはフェルミ推定やケースの課題に対して、実際に誰かに聞いてもらってディスカッションを行うことを指します。俗にいう模擬面接ですね。

実際の面接を想定して面接官が突っ込みそうな箇所を想像して論理的飛躍がないかどうかをディスカッションしていきます。

このようなフェルミ推定やケースの壁打ちのメリットは一人で自習するよりも何倍も勉強になることが多いので私自身、基本的には壁打ち相手を探して定期的に行っています。一時的にはメンターを雇って対策することお金も時間をかけました。

ChatGPTとは

ChatGPTはOpenAIがリリースした対話式のAIです。日本時間の2022/12/1にリリースした最新の対話式AIです。

このChatGPTですが、現時点でなんと100万ユーザーがいるとのことです。

以下のリンクから実際に使えます。Googleアカウントがあれば簡単にログインできます。

https://chat.openai.com/chat

さて、ここからようやく本題です。お待たせしました!!!実際にChatGPTと壁打ちをしてみたいと思います。
(本題まで長々とすみません…。この時点で4000字超えました。)

フェルミ推定の場合

お題は例題と同じである『日本の電球の市場規模』に関してです。

実際の対話内容がこちらです。

実際の対話内容。ChatGPTは何もフェルミ推定してくれません。

……なんでしょう。なんか、ひろゆきみたいに話をすり替えられた気がします。そもそもフェルミ推定に関して私とChatGPTでは別の認識の仕方をしているようです。

これ以降も何かフェルミ推定してくれないかを期待していろいろな聞き方をしたのですが、以下のようにはぐらかされます。

実際の対話内容。立式を提示しても何も意見を言ってくれません。

どうやら、ChatGPTではフェルミ推定は実際にはしてくれなさそうです。
私が面接官であれば、ChatGPTは問答無用で落として、お祈りメールを送ることになると思います。

フェルミ推定の壁打ちはあきらめてケースの壁打ちに移りたいと思います。

ケースの場合

お題は例題と同じである『東京からカラスを減らすためには?』に関してです。

まずは、ケースの壁打ちを依頼してみました。

実際の対話内容。フェルミ推定のときよりちゃんとしてくれそうな雰囲気です。

返答内容としては、好意的な印象でケースの壁打ちを承諾してくれました。
そのまま、課題に対して投げかけてみます。

実際の対話内容。フレームワークを与えていない状態で最初の思考過程を提示しています。

かなり、視座が高い状態から分析をしだしています。正直私よりも思考の視座が高い気がします…。

ここでは2つ目の観点に関して深掘りをしていきます。

実際の対話内容。衣食住でそれぞれ分析しています。

かなり、論理的に分析しているのではないでしょうか。
これをもとに課題特定に対して質問していきます。

実際の対話内容。衣食住での分析結果から課題を列挙できています。

しっかり、課題を言語化できている印象です。
最後にこの課題に対して施策の提案をお願いしています。

実際の対話内容。文字数制限により全部表示できていないが、かなり現実的な施策を出している印象です。

ChatGPTの仕様上、文字数制限があり全部をみることはできませんでしたが、かなり施策を出してくれている感じです。
最後に効果の観点から施策を1つに絞っていきます。

実際の対話内容。今回はカラスを捕獲することが最も有効的であると判断したようです。

今回は「カラスを捕獲すること」がもっとも有効な施策として判断したようです。確かに、効果的な側面で考えると実際に捕獲する(=直接的に減らす)ことが有効であると言えます。

まとめ

今回はChatGPTと壁打ちをしてみました。結論としては、

  • フェルミ推定のお題に対しては推定してくれない

  • ケースの課題に対しては誘導すると施策までしっかり提示してくれる

となりました。

正直な感想としては、対話としてのクオリティの高さに驚いています。ただ、聞き方を間違えると期待した返答をしてくれないことがあるので、質問するときはちゃんと言語化してあげる必要性があります。

ながながと検証していきましたが、今回は以上とします。ここまでよんでくださりありがとうございました!

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