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innov. note #4 なぜデザインにプロセスが必要なのか

innov. note、記念すべき4人目はYu Uchikuraが担当します!

僕は東京大学DLX Design Lab.という場所で、修士学生として分野や領域を横断した『デザイン駆動型イノベーション』について学んでいます。今回は、「なぜデザインにプロセスが必要なのか?」という問いに対して、これまでの研究室やinnov.での活動等を通して感じた、僕なりの考えを書かせていただこうと思います。

デザインとは?

本題に入る前に、「そもそもデザインとは何ぞや?」というツッコミがありそうですが、この問いには僕も到底答えられる気はしておらず、、、というのもデザインとは特定の領域や分野のことではなくて、もっと広義の人間の根源的な営みや思想であると感じるからです。以前、ある授業の発表で自分なりのデザインの定義を『世界を新たな視点で認識し、それを社会に伝えること』であると言ったところ、「それはどの分野でもそうだよな~」という反応が多方面から返ってきたことがあります。そう、まさに、デザインというのは特定の分野や領域ではなく、どの分野にも共通しているマインドセットのことなのだと、強く思うのです。(このテーマについてはまた別の機会に皆で話し合いながら、じっくりと言語化してみたいと思います!)

「学習」と「協働」

話を「なぜデザインにプロセスが必要なのか?」という問いに戻します。この問いに対する僕なりの答えは、「『学習』と『協働』を加速させるため」です。

ここで言う『学習』とは、ある行為とその結果の関係性について観察と分析を通じて、一般化していくことを指しています。例えば、ある図形の問題に対し、余弦定理を適応することで解けたという事象から、〇〇のような状況にある場合は、余弦定理を適応することで解を導けるという一般的な見解を導き出すことです。何かのアイデアを考えるとき、あーでもない、こーでもないと悩み苦しみ、スケッチをしては捨てスケッチをしては捨て、、、と繰り返しているうちに、ふとアイデアが浮かんできた経験はないでしょうか。その閃きがなぜ起こったのか、どうしたらもう一度起こすことができるのか、を考えることが学習するということです。一般的に閃き:creative leapと呼ばれるアイデアの飛躍を、意図的に起こしていく、その再現性を高めていくためにプロセスを設定して学習を加速させていくことが必要だと感じています。

もう一つの『協働』という要素の背景には、今日盛んに議論されているデザイン領域と深い関係があります。これまでのデザインが射程としていた「スタイリング」や「ブランディング」と呼ばれる領域では、デザイナーという個がその個性的なセンスを発揮することが最優先事項とされていました。しかし、今日盛んに議論されるデザインの射程とは、プロダクトやサービスといった既存の枠組みを超えた、システム全体を調停する役割を含んでいます。これを実現するためには、分野や領域を超えた知見をarticulateし、一つのvisionを示す力が必要になってきます。仮にアリストテレスのようなスーパーマンがいれば話は違うのかもしれませんが、高度に専門化が進んだ現代において、一人の天才がすべての知見を獲得しビジョンに落とし込むことは不可能です、、、そこに分野を横断した協働の必要性があるのだと感じています。分野も価値観も全く異なる人々が、ひとつのテーブルに集まって未来について話し合う。ある人は英語で、ある人はフランス語で、ある人はドイツ語で自らの意見を主張していては折角の専門性が無駄になってしまいます。そんな時に共通の言語となってくれるのがデザインのプロセスだと感じています。

(おまけ)

『学習』と『協働』という要素を、対内向け⇔対外向け、プロジェクト中⇔プロジェクト後という二つの軸で分類すると以下のような図が描け、もう少し詳しくその性質について考えることができそうです。

プロセスの持つ四つの性質

プロセスとは複数人が協働するための①-a共通言語(Rhizomatiks齋藤精一さんはこれを『プロトコル』と呼んでいます)であり、物事を進める際の②-a道しるべであり、アイデアの創出過程から普遍的な示唆を抽出し、再現性を高めるための①-b一般化であり、リフレクションの際に我々が辿ってきた道を相対化ための②-b評価軸なのだと思っています。これらの性質についても、今後innov.の中での実践活動を通して、更に言語化していきたいと思っています!

2019年12月21日
innov. 
Yu Uchikura

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