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使役契約とハーレムと誠実さ【ビステマ感想】

2022年秋アニメ『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』の感想。タイトルが長いぞ。公式略称はビステマだけど、「勇者パーティからの追放」要素も「最強種の猫耳少女」要素もなくて良いのか……?

勧善懲悪のご都合展開の連続だが、その辺に目を瞑れば、チョロインハーレム作品として見れる。作画も安定してて良い感じ。

推しはカエデちゃん。天真爛漫で可愛いにゃんねぇ……。


「使役」というモチーフの運用

冒険ファンタジー×ハーレムの作品では、主人公に好意的な美少女をパーティに次々加入させていくのが典型的だ。『ビステマ』もその例に漏れない。しかし、『ビステマ』はそこから「恋愛」要素を削って「使役」というモチーフを加えることで、独自の効果を得ている。

ハーレムモノにおいて、主人公とヒロインたちは強い関係性で結ばれていた方が良い。気まぐれや利害の一致で同行するより、特別な関係があった方がなにかとおいしい。この関係性の強化によく用いられるのが恋愛感情だ。しかし、ほのぼのとした不変のハーレムを描きたい作品では、恋愛の進展が邪魔になることも多い。一人の優遇が嫉妬を生んだり、一人を選ばない主人公の不誠実さが露呈したり……。ハーレムの強化のために加えた恋愛要素が、逆に幸せなハーレムを崩壊させかねない。

『ビステマ』では、恋愛関係の代わりに使役関係を採用することで、この問題を解消している。双方向であることが望まれる恋愛関係と違って、使役関係は、最初から一方的な搾取関係であることを示唆する。使役関係が元来持つ不誠実さゆえに、それに同意した契約後のトラブルが起きづらい。ヒロインが増えるなど多少のイベントがあっても安定したハーレムが維持される。


不誠実な使役関係と、誠実なレインの人間性

使役関係の不誠実さとは裏腹に、主人公・レインは極めて誠実なキャラクターとして描かれる。

例えば、使役の契約は毎回ヒロイン側から提案される。そして、レインはそれに対して毎回「本当に良いのか?」と及び腰な様子を見せる。これにより、ヒロインが積極的に同意していること、レインから押し付けていないことが強調されている。

また、レインが積極的にヒロインに指示を下すことも少ない。追放モノに不可欠な復讐でさえ、「大切なレインが貶められた」と怒るヒロインが主導する形で行われる。加害行為についてレインが消極的な分、ヒロインが積極的に動くことでストーリーを展開させている。また、ヒロインが積極的に指示を求めることで、レインが一方的に命令する必要がなくなっている。

不良が捨て猫を拾うと一層優れて見えるように、レインが誠実に振舞うことでベースである契約の不誠実さをうやむやにしている。

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