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昔のことを思い出している

実家に置いてあるピアノを手放すにあたってピアノを習い始めた頃のことをすこし思い出してきたのでメモ

私がピアノを習い始めたきっかけは、幼稚園で先生が弾いていた『猫ふんじゃった』が弾きたかったから。両親にそう伝えて、近所のピアノ教室で私はピアノを習わせてもらっていた。だけど、思い出してみると本当の理由は全然違っていた。本当は、同じマンションに住む幼馴染のヒロくんが一足先にピアノを習っていたのがどうしても羨ましかったのだった。私は人知れず、ヒロくんよりもうまく弾けるなりたい、という闘志を持ってピアノを習い始めた。

母はヒロくんとヒロくんの家庭のことをよく褒めていた。ヒロくんは優秀だとか、いつもオシャレな服を着ているとか、家具が素敵だとか。実際にヒロくんの家はいつも清潔で、うちと同じ間取りなのに広く見えた。手触りの良いソファと観葉植物がリビングに違和感なく溶け込んでいて、子供ながらにも分かるくらい、上品で洒落た家だった。私とヒロくんが遊んでいるときでも、母はヒロくんがやっている遊びなら私もやってOKで、ヒロくんがやってはいけないことは私もNGだった。そういう経緯で、ピアノ教室の月謝は我が家にとって決して安くなかったと思うけど、ヒロくんが習っていたおかげで私も習うことができたのだと思う。ドレミを位置をようやく覚えてきたころ、私の母とヒロくんのママは喧嘩をして、私たちも遊ばなくなった。
そして目標だった猫ふんじゃったが弾けるようになった頃、ヒロくん一家はどこか遠くへ引っ越していき、私は別の曲が弾きたくなっていた。

母にとってヒロくん一家ってなんだったんだろう、と今でもたまに考える。

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