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脱ぐか、脱がないか

数年前に友人と二人で新宿ニューアートというストリップ劇場へ行ったことがある。その日は、私たちが当時大ファンだった某女性アイドルのファンクラブバスツアーで長野へ行くために東京へ前乗りしていた。
(写真はバスツアー先の長野県にある白樺湖)
私たちは当時ススキノのミックスバーやポールダンスが見れるガールズバーで遊ぶのが楽しかった時期で、ストリップ劇場に行ってみたい、という私の提案はスムーズに採用された。

アイドルのバスツアー前夜にストリップ劇場に行くのは妙な背徳感があった。まるで、アイドルは決して見せてくれない部位をしかとこの目に焼き付けてバスツアーへいざ行かん!というような、むっつり、かつ入念に”準備”をしているような気持ちになった。

ゴールデン街の小道を歩いていると、思い描いていたストリップ劇場のイメージを裏切らないピンク色の気怠いネオンが目に入った。念願のストリップショーを見れる興奮と同時に、いざお店に入ることを考えると全身が強張った。
男性はどんな風にショーを見ているんだろう。どこまで許されている場所なのだろう。いくつか疑問はあったけれど、私たちは、老舗であること、女性料金が設定されていること、あくまでショーを楽しむ場所であることなどを入念に確認して、「何かあればすぐに退散しよう」と気持ちを固めて入店した。

入店してしばらくするとショーが始まり、真っ白なドレスを着た女優さんが、一時代前に流行ったいかにも結婚式で使われそうな曲調のJPOPに合わせて登場した。ショーが始まる前にコンセプトの解説があった(気がする)ので、結婚式をイメージしたステージであるということはすぐに理解できた。
女優さんはダンスをしながらドレスを徐々にはだけさせてゆき、サビ前でほとんど裸になって花道までやってくる。そして、サビに入った瞬間、ご開帳!!と共に観客からの歓声が場内に響き渡った。
(歓声とともにカラフルな紙テープがステージ上に投げ込まれていたんだけど、これは場内で購入できて、とっておきの場面でステージに投げてもOKな公式グッズだということを後々知った。プロレスでもこういう演出あるのかな?)

最初の女優さんのショーは、コンセプトといい選曲といい、いかにも純真無垢な花嫁という感じで登場しておきながら、サビの解放感ある歌声と共に開脚する、というアンバランスな表現がおかしくて、でも女優さんの姿は本当に美しくて、ダンスもしなやかでとても見どころの多いショーだった。エッチな気持ちで裸が見たくて来るというよりはショーがかなり楽しい、ストリップはエンタメだということがすぐに分かった。

その日は平日で10人弱の中年男性が店内にいたが、二人目の女優さんが登場したときに見た、とある男性客を見て私は一気に安堵の気持ちでいっぱいになった。男性客は突然法被を羽織りだして、ペンライトを持ってステージを見つめていたのだ。しかもその法被にはまさに今登場したであろう女優さんの名前が刺繍されている。もう、その姿はまさにアイドルヲタク。
ああここはアイドルの現場だったのか!彼らは私と同じだったんだ。

二人目の女優さんは女王蜂の『フランス人形の呪い』という曲に合わせて、まさに歌詞通りの持ち主に捨てられて狂っていく人形という感じのコンセプトで踊っていた。

フランス人形がまだ遊べるのにって嘆いているわ
フランス人形がまだ遊べるのにって嘆いているわ
なんで泣いているの 私の髪をなでながら
最後なんて云ったりしないで
かわいそう

歌ネット

パッと見は幼く見えてお人形っぽいのに、ダンスをしていると背中や二の腕の筋肉が細かく動いているのが見えて、そのギャップが美しかった。表現力と肉体美に魅せられて、私はその方の大ファンになった。

公演が終わると、チェキやプレゼントを直接お渡しできる時間があるとアナウンスがあった。こんなのもうアイドル現場と同じじゃん!!!!!!
少し違うのは金額によって脱ぐか、脱がないかが決まるようだった。
私はすっかり二人目の女優さんのファンになっていたので、この気持ちを伝えたい!!!と思ってチェキをお願いした。背中の筋肉が美しかったことを伝えると背中をこちらに見せるポーズで写真を撮ってくれた。すごく密着してくれた。サインもくださった。なんという神対応!

そして翌日、予定通りファンクラブバスツアーに参加し、私たちは目の前にいる世界で一番かわいいアイドルに大興奮していた。昨夜、裸の女性を見に行ってしかも写真まで撮ったなんてことが悟られないように、バスツアーを思い切り楽しんだのだった。

札幌へ帰ってきてから女優さんの出演する作品を検索したのはここだけの話です。

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