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遺失物

僕は大学に入学した当初、スキー、オリエンテーリング、ゲーム制作の3つのサークルに所属していました。そうして交友の幅を広げていたこともあり、僕が所属していた別々のサークルの人たちがまた違う場所で出会ってしていたりと、共通の友人という形で親睦が深まることもありました。これはスキーサークルの同期のS君、K君、オリエンテーリングサークルのE君と仲良くなり、E君の家で初めて宅飲みをした時の話です。

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僕、S君、K君のスキーサークル組は普段から激しい飲みを繰り返しており、しょっちゅうK君の家で宅飲みをしては、僕とS君で一緒になってK君を潰して楽しんでいました。K君はいつも潰される側で、最後の方は辛そうな表情をしてトイレに駆け込み、出て来なくなってしまうというのがお決まりのパターンでした。そんなK君ですが、今回はE君という自分より狙われやすく弱そうな人の家で飲むということで、心なしか調子づいた感じでE君宅に向かっていました。

E君宅に着いた僕達は、挨拶もそこそこに早速買い込んできたお酒を広げて宅飲みを始めました。E君はいわゆるオタク系いじられキャラのツッコミ役であり、銀魂の新八をややテンション低くしたみたいなノリの人で、僕が壁にかけてあるポスターを指差し「これ知ってる。スピリチュアルデブネキでしょ。」というと

「ちげーよ!!海未ちゃんだよ!!」

と律儀に反応を返してくれました。(このくだりは5回くらいやりましたが全部しっかりツッコんでくれました。)

そんな下らないやりとりをみんなでワイワイ続けていましたが、E君はお酒がだいぶ苦手らしく、こちらが勧めてもあまり飲まないので僕とS君は矛先をK君に向けていつも通り潰すことにしました。K君は今日は飲ます側に立っているつもりだったようですが、まさかいつもの展開になるとは青天の霹靂だったようで、ものの30分で潰れてしまい、大いびきをかいて寝だしてしまいました。

その流れを見ていたE君は「お前らのとこやべーな…」と引いていました。僕とS君は「E君が飲んでくれないから代わりにK君が飲んでくれて潰れちゃったよ。この後はE君が飲んでくれるよね?」と聞きましたが「いや、無理!」と断られてしまいました。なので仕方なく潰れているK君と再び飲むことにしました。ですがK君は寝てしまっていて自分では飲めない状態なので、仕方なくいびきをかいているK君の口に僕たちがウイスキーを注いであげました。するとK君は息ができなくなってすぐにむせ返してしまい、E君はそれを見て「溺れているよ…」と言っていました。

E君は飲んでくれなく、K君は酒に溺れてしまったので、仕方なく僕とS君は二人だけで限界まで飲み続けました。途中、キャパの限界を迎えたS君がその場で戻しそうになってしまったので、慌てたE君が咄嗟に買い物でもらったビニール袋を差し出して、その中に全て注がせていました。その時にはすでに時刻は深夜3時過ぎており、S君も僕も限界を迎え、E君も眠気がピークに達したのかそのまま自然に全員寝落ちしました。

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翌朝、目覚めた僕たちは誰一人絶命していないことにホッとしながら帰り支度をしました。K君はとても辛そうにしていましたが、S君はケロッとしていました。戻してスッキリしたおかげで翌日に引きずらずに済んだんだろうなと思うと同時にふと気になり「昨日の××袋ってちゃんと捨てた?」と聞きました。S君は「え?わかんない。」と答えました。それを聞いたE君は「まじ?!嘘!!?それはない!!」とこれまでで一番迫真のツッコミをしてくれました。

その後は男4人で行方不明になったS君の××を見つけるため部屋の中を探し回りました。ゴミ箱やトイレの周りを探してもS君の××袋の残骸がなかったことから昨日S君が戻した当時の状態で部屋のどこかにあるはずでした。幸い、5分ほど探したところでベッドの下の方からビニールの口が固く閉じられたS君の××袋が見つかり一安心となりました。僕は人の家で××を行方不明にさせるという離れ業をやってのけたS君は凄いなぁと思うと共に絶対に僕の家には呼ばないようにしようと決めました。それ以降僕たちがE君の家に呼ばれることはありませんでした。

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