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おじいちゃんとカナブン

僕のおじいちゃんは父方も母方も亡くなってますが、どちらも変な人でした。これは母方のおじいちゃんが生きてた頃の話です。

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僕の母方のおじいちゃんはとても孫の事を可愛がっており、すごく優しかった思い出しかないのですが、今思うと生き物に対してかなりドライというか、モノ程度の扱いしかしていなかったように思います。

僕が4~5歳の頃、おじいちゃんは火遊びにハマってました。

当時70歳で火遊びにハマる年寄りってかなりヤバい気がしますが、子供だった僕はおじいちゃんに教えられるまま一緒に火で遊んでました。

虫眼鏡を使って新聞紙に太陽光を集めて燃やしてみたり、落ち葉を集めて火を点けてみたりと、未就学児にやらせるべきではないことを色々させてもらい楽しかった記憶があります。時には調理用のプラスチックボウルを燃やして遊び、おばあちゃんにおじいちゃんがこっぴどく怒られていたりもしました。

そうした火遊びがエスカレートし、火のついた新聞紙をアリの巣に突っ込むなどの遊びをおじいちゃんとするようになりました。子供への情操教育としてはかなり良くないんじゃないかなと今になって思います。

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ある夏の晩、お酒に酔って上機嫌なおじいちゃんが網戸にカナブンがとまっているのを見つけました。

おじいちゃんは僕を呼び寄せて、「面白いことが起きるから見ているんだよ。」と言いました。僕がワクワクして見ているとおもむろにオイルライターを取り出し、火を点けて網戸にとまっているカナブンに近づけました。

おそらく、火に悶えて生き絶えるカナブンを見て楽しみたかったんだと思いますが、現実はそうはいかず、

当たり前のように網戸が燃え始めました。カナブンは秒で逃げ去りました。

幸い、おじいちゃんと僕の火遊びにいち早く気づいた母親が火元に水をかけてすぐに消化しました。おじいちゃんは母親とおばあちゃんに烈火のごとく叱られてました。カナブンに火を点けようとして網戸とおばあちゃんと母親に火を点けてしまったのです。僕は全然面白くないなと思いました。

その日以降、僕とおじいちゃんは火で遊ぶことはなくなりました。僕とおじいちゃんの最後の火の思い出は、おじいちゃんの火葬までありませんでした。

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