臆病は立派な才能だ
「臆病なのは恥じることではない。それは立派な才能だ」
新社会人として初めての9月。
ツーリング先の休憩先で元アマチュアレーサーの人が、
うまくバイクに乗れない僕に言った言葉だ。
僕は正直に言って、うまくバイクに乗れる人ではない。
カッコよく曲がれる人でもないし、Uターンすらなかなかできない。
それは、自分が臆病なのが原因だと思う。
それこそ、バイクを倒してしまったらどうしようとか考えてしまうし、
倒してこそバイクの楽しみなのに、怖がって思いっきり倒しこむことができない。
それでもバイクに乗るのは楽しいし好きだ。社会人となって関東に引っ越してきた僕は、ある休日に伊豆まで出かけることにした。
辺りを一望できる山道を走っていると前に綺麗に走るバイクが一台。
とてつもなく速いわけではないが、流れるように走っていく。
近くの休憩所でその人が休んでいた。たまたま一緒の場所に鉢合わせたので、声をかけてみることにした。すると、どうやら元々レースをしていたみたいである。
「どうやってあんなに綺麗に走れるんですか?怖くてなかなか倒せないんですよね・・・」
そう尋ねてみた。
「君臆病だろ、だけど大丈夫だ。」
「ちゃんと怖がれるのは危ないと思えている証拠だ。怖がれない人は無茶をしてすぐ走れなくなる」
「でもそれだけじゃダメだ。怖いと思ってても速くなりたいなら、一歩ずつ練習して克服するしかない」
この言葉、日常生活でも同じことが言えるんじゃないだろうか。
失敗したらどうしよう・・・とか、これをすると変なやつだと思われるんじゃないか・・・など考えてしまうことは多々ある。
その結果、いつも通りな行動をとってしまって損をすることが多い。
これが積み重なってしまったら、なんとなくだけど後々後悔しそうである。
そして多分それはカッコよくない
怖いと思っていても欲しいものがあるなら努力するしかない
しかも、できることから、死なないところから着実に。
ところで、話をしていた休憩所では二人で缶コーヒーを飲んでいた。
一足早く飲み終わったその人は、「お先に、気をつけて!」と一言のこし
颯爽と走り去っていく。
僕はゆっくりコーヒーを飲み、次の目的地に向かう。
久しぶりに心に残るツーリングになった。
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