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かわいい父と激しい母と私の介護日記(32)

介護の限界

「腎臓の機能が低下しています。」
往診医よりお話があった。

週に2回の入浴と、リハビリは中止になった。体力を消耗してしまうそうだ。

父は、よく来てくれるナースさんに、「もうダメかなぁ。」と弱音を言い出した。
母にも「長い間悪いなぁ。ありがとう。」と言ったそうだ。

母がとうとう言った。
「もう限界。」

訪問のナースに、「もう入院ぐらいのレベル」と言われたそうだ。みんな母の負担を心配している。

「オムツ交換もあちこち管がついてて怖いし、たん吸引もある。何かあったら、本当に怖くて診れない。」

この母が弱音を言うなんて、本当にもう限界なのだろう。私も思うように仕事が辞められず、助けられない。

「いいよ。次の往診の時に、先生に話そう。」私もその時間、仕事を抜けてドクターを迎えた。

その日ひと通り検査を終えた後、ドクターは少し考えて、
「腎臓の機能を回復させる治療を、1週間集中してやってみます。これはかなり良い治療だから。」との方針を説明した。

私と母は····入院させて欲しいとは、言えなかった。
ドクターは少しでも回復させようと、試行錯誤してくれている。往診医のクリニックは入院対応していない。1週間の集中治療の結果もみたい。

後日、母を心配した訪問看護が、ケアマネに連絡した。ケアマネとドクターで入院について検討した様だ。

ケアマネが訪問して、母と話しあった。
ケアマネからは、今の状態で入院させてくれる病院は、なかなか難しいとの事。
また、入院したら今のような治療や手厚い看護はしてもらえない。
往診医も、訪問看護も、全力で助けるので、母は無理せずオムツ交換も、たん吸引も任せてしまいなさい。

「家で看取る。もう決めた。」
母は言った。本当はそうしたかった私。「うん。でも無理しないで。出来ない事は、任せよう。」と言った。

毎日、訪問看護が来て、オムツ交換や清拭、点滴の交換やたん吸引、腕の剥離の処置等してくれる。
訪問医のナースも、往診がない日は電話で様子を聞いてくれる。

でも、父は一日中眠っているようになった。やっと起こしても、少し水分を取るだけで、食事は全く食べない。点滴のみで栄養を入れている。

もう、これは延命処置なんだ。


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