かわいい父と激しい母と私の介護日記(28)

施設という選択

「お父さん、このままでいいのかな?」
母が言った。
「施設とかに入った方がいいのかも。」
あぁとうとう来たか、この話。
母はやっぱり父の介護が負担なんだ。

私は父がかわいいので、自宅介護したいのだ。と、言っても正社員の私はほとんど仕事で、母に任せきりだ。でも、父を施設に入れたくない、施設で働いていた私なりの思いがある。

でも、母の施設に入れる理由は、意外なものだった。
このまま、部屋にずっと寝たきりなんて、父が可哀想だから。
施設なら車イスで移動出来たり、他のお年寄りと交流も出来る。レクリエーションに参加したりして、今よりも楽しく暮らせるのでは?と母は考えていた。
「このままじゃ、お父さん頭がおかしくなっちゃう。」と母は言う。

「お年寄りって、寝たきりになったらそういうものじゃないの?寝ながら趣味したり、テレビみたりして過ごすでしょ?」施設に入れたくないので、反論する。

「そうだけど、お父さんって人とお話したり、動いているのが好きだから。趣味とかないから、毎日ボーッと寝てるだけで可哀想じゃない?」

そう。ウチの両親は、陽キャだった。母も社交的だが、特に父は誰でも別け隔てなくお話しする。
ボロボロの服のオジサンと道で話してたり、ご近所で敬遠されている方や、外国人の集団と話してるのを見かけては、ギョッとする私。

私は両親と真逆の人見知りなので、父は人に囲まれてる方が良いという発想が全くなかった。
寝たきりでも、家族と暮らすことが幸せで、当たり前と思っている。自分だったら老後は集団生活よりも、人に気を使わす自宅でのんびり趣味とかしながら暮らしたい。

これは、両親と私の性格の違い?
「じゃあ、お父さんにどっちがいいか聞いてみる?寝たきりでも、家族と暮らしたいか?施設で動けて、いろいろな人と一緒に暮らしたいか?」
「そうだね。今度聞いてみよう。」と母。

でも、結局私たちは父に聞けないでいる。聞いたら父は、自分の介護が大変なのかな?と思って、行きたくないのに施設に行くと言うかもしれないから。

母の言う通り、父には施設が合っているかもしれない。もっと生き生き暮らせるかもしれない。でも、イヤなんだ。施設に入れたくない理由がある。これは私のエゴなんだとわかっている。母だって、日中1人で介護は不安なんだ。
もう、仕事辞めて在宅ワークを探そう。
だから、施設に入れないで。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?