涙落ちる前にその指で時を凍らせて
パッチワーク/ぼくのりりっくのぼうよみ
昔、海外雑貨の営業事務をしていたことがある。
そこは人数も少なく、表面上は和気あいあいとした雰囲気だった。
表面上は、と言ったのは2つに分かれた部署の片方の長が、もう片方をよく思っていないこと、部長を嫌ってる人が多いことが理由。
営業事務を雇うのは初めてらしく、アシスタントを付けられた営業さんも少し戸惑ってるようだった。業務の説明はなかったし、そもそも仕事があまりない。私も事務未経験で、いま考えてもなぜ採用されたのかわからなかった。
新しく仕事をさせて貰えるでもなく、ただ同じ作業を繰り返すだけの毎日。私は単純作業が苦手なのだと身に染みた職場だった。
そのころは、仕事なんてそんなものだろうし私の代わりなんていくらでもいる。ここの人たちにとって私は居てもいなくても同じだ、と思いながら働いていた。
幸いにも取り扱っている雑貨は見ていて楽しいものばかりだったし、意地悪な人もいなかった。さらにもう一つの幸いだったのは、ラジオが流れていたこと。
事務所ではFM802が選局されていて、当時の「今月のヘビーローテーション」に抜粋されていたのが、ぼくのりりっくのぼうよみ「パッチワーク」だった。
イントロの切なげなメロディーに愁いを帯びた歌声に耳を奪われた。泣きそうになった。
毎日同じ電車に乗って、同じような毎日を過ごして。生きてるけど心は死んでいるような日々。
ラジオからこの曲が流れてくるたび、心にこびりついたやるせない気持ちが浄化されていくような気がした。
今日もこの曲が沁みるなあ、とキーボードを打つ。
✧
通勤中に、全ての曲をシャッフルで聴いていたとき不意に流れてきて、当時の心境とかがフラッシュバックしたので書きました。
感受性が豊かすぎるのかメンタルが弱いのか、たぶんどちらもだけど、そのときの感傷的な心境に合う曲を1曲リピートで聴き続けて感傷に浸るのが好きです。
最後まで読んでくださってありがとうございます!