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「他者」の存在ありき - アーティスト公募について(主宰・柳嶋)

あけましておめでとうございます!

そして、noteでは、はじめまして。

initium ; auditorium主宰の一人、柳嶋耕太(やなぎしまこうた)です。
本業は、合唱指揮者をやっています。2017年までドイツで指揮、合唱指揮を学び、帰国後は首都圏を中心に活動しています。

この記事の最後に、initium ; auditoriumが新たに始めたアーティスト公募についてのお知らせを掲載しています。その前に、主宰の一人である僕、柳嶋がどのような思いでinitium ; auditoriumと関わっているかについて、自身のキャリアを踏まえた目線で書かせていただきました。目次から、好きな順にお読みいただければと思います。


「他者」の存在ありき

語るまでもなく、2020年3月以降コロナ禍の影響は僕自身を含む多くの人々の生活のあり方、仕事のあり方を変え(もしくはそれそのものを奪い去り)つくしてしまいました。しかも、我が国においては残念ながらこれからこそが感染拡大の「本番」というような状況です。さまざまな施策や公共空間のルールチェンジがあり、それらを論評することはここではしませんが、誰がなんと言おうと、その影響をもろに受けざるを得ない僕たちです。

もはやこの状況に飼い馴らされ、自らの状況を省みることもおろそかにしてしまいがちですが、改めて考えてみると、ここまでインパクトのある環境変化が、まさか自分の生きている間に起ころうとは。恥ずかしながら、まったく想像ができていませんでした。まさか、留学から帰り、満を持して祖国で指揮者の仕事を始めはや3年目、軌道に乗り始めた矢先、音楽そのものが満足に取り組めない時間がやってくるとは。

1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月。Googleカレンダーにびっしり書き込んでいた予定がいくつか残ったリモート仕事を残して真っ白になって、時間が大量にできて、外に働きに出るかわりに、あらためて考えること・話すことに時間を費やしました。合唱にかかわる人々をマネジメントし、響きを形づくり、音楽という流れに乗せる。という仕事のうつわが従来どおり成立しえないとなったとき、果たして自分は何がしたいのか?合唱指揮者という肩書とそれを成立させるルーティンを選ぶ向こう側に、何を見ようとしていたのか?ということ。

まず改めて強く意識させられたことは、指揮者稼業ということが、そのアイデアを成り立たせるまでの間にいかに多くの方々が関わってくださっていて、そして何よりも、いかにそういった他者の存在「ありき」であるのか、ということ。「指揮」「指導」という行動形態があり、それがルーティン化してしまっているときに、あたかも自分が0から1を作り出しているような勘違いをし、その根本原理を倒錯して認識してしまうことがないか、ということを自らに問いました。

このパンデミックにおいて、僕自身はまことに幸いなことに、関わってくださる多くの「他者」の皆さまによって支えられ、無事に生き延びることができてはいます(むろん、一寸先は闇だという恐怖もまた常にあります)。そうであるときに、僕自身もまた、仮に指揮者という仕事のうつわが不完全であるとしても、あらゆる方法で「他者」のためになりうることがしたい

このときの「他者」とは、まず日常的な音楽活動を共にする合唱団の多様な歌い手の皆さんであり、晴れ舞台を共に支えてくださる演奏家の皆さんであり、その聴衆の皆さんであり、あるいはその曲を世に生み出した作曲家であり、まだみぬ音楽の可能性でもあり…。このそれぞれのあり方の「他者」に自分なりにアプローチしていく方法を考え、それをコロナ禍以降の音楽活動、社会的合唱活動として少しづつ取り入れてきました。


だからauditorium

そういった僕なりの様々なアプローチのうち、このinitium ; auditorium(イニツィウム・オーディトリウム)のアイデアが、もっとも大切な部分を担っていることは言うまでもありません

オーディトリウムでは、《美術館のような音楽鑑賞体験》を標榜し、落ち着いたデザインで、これまでに20名以上のアーティストがこのために制作した映像作品を展示、販売しています。

2020年10月には《ここから、「わからない」を旅しよう。》というコピーを設定し、プログラム、インターフェースともに、YouTubeとは一味違う、音楽を通じた知的邂逅が期待できるようなサイトづくりに取り組んできました。さらに年明けに合わせパスポート機能(24時間、1週間)を搭載。一定価格で一定期間すべての作品が観放題となり、いっそう未知の音楽体験に歩をすすめうる環境を整えつつあります。今後も、このnoteをよく更新している優秀な運営、エンジニア陣の強力なサポートのもと、さらなる改善を計画しています(本当に頭が上がりません!)。

これまでに出展していただいているアーティスト陣は、その大半が、僕と、主宰のもうひとりである谷郁(たにかおる)が音楽家として従来付き合いのあった方々で、オーディトリウムのコンセプトに共感してくださり、各自制作に取り組んでいただいたものです。尊敬すべき仲間として、ありがたく関わらせていただいてきたアーティストたちです。

しかし、出展するために提出された作品を主宰の二人でプレビューしていくと、そこには常に新鮮さ、意外性への驚きがありました。もちろん、これまでご一緒してきた中での素晴らしいパフォーマンス実績に期待してお声がけさせていただくわけですが、いい意味でその期待が裏切られることの連続でした。

映像作品の自主制作という、演奏家の多くにとって未踏である分野であること、リモートワークを含む、制作条件の著しい変化、社会情勢と自身のおかれた状況。未知の新しい場で、なお表現を試みるという大胆さ。それらすべてを反映し、非常にアクチュアル(現在的)な作品群が集まってくることになりました。いま、ここでしか創れない、ここでしか体験することのできない作品が並んでいます。この時間と空間に対して、各アーティストの出したそれぞれの答えを、ぜひともより多くの皆さまに味わっていただきたいと考えています。

各作品のサンプル映像はすべて無料でご覧いただけます。まずはぜひサイトにアクセスしていただき、さまざまな形で生命を燃やしているアーティストたちに思いを馳せていただけないでしょうか。


アーティスト公募

そんなinitium ; auditoriumでは、昨年12月25日より今月末(2021年1月31日)まで、あらたに参加してくださるアーティストを公募しています。詳細は下記の公式プレスリリースをお読みください。

上述したように、昨年までの出展アーティストは、そのほぼ全員が主宰である柳嶋・谷と従来付き合いのある皆さんでした。

今回、サイト運営がある程度軌道に乗ったことを契機に、この《美術館》をさらに発展させ、多くの、僕たちのまだ見ぬアーティストの皆さんにとっても、自らのさらなる可能性に挑戦しうる場、激動の世の中で自分を見つめ直すために役立てる場としていただきたく、アーティストを公募することになったのです。

諸条件など詳細は上記プレスリリースに記載しておりますが、規定時間を満たす映像作品であり、そして僕たちが提案する《ひらく》というキーワードに何らかの形で関与している作品内容である、ということ以外は、ほぼ全く制約はありません。

この《ひらく》というワードにも、オーディトリウム主宰、運営グループ側の思いも当然ありますが、それはまた次の記事にて語るとしましょう…

すでに、僕たちのメッセージに呼応してくださり、応募してくださったアーティストさんたちが多数います。僕たち自身もまた、新たな他者との出会いへの期待に胸を膨らませながら、それを糧にこの厳しい冬をなんとか持ちこたえようと奮闘していきます。

応募は、プレスリリース記事内に記載されている応募フォームからお待ちしています。応募段階では、詳細な企画書を提出する必要はなく、まずはその意志を表明してくだされば十分です。後に、各アーティストさんたちと都度連絡を取り合いながら企画・制作に進んでいただく形となります。運営チーム一同、できる限り皆さんのサポートをさせていただきます。

ぜひ、ちょっとでも興味を持たれたならご連絡いただければと思います!


initium ; auditorium主宰
柳嶋耕太

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