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空っぽの鳥かごのその破壊力

あまりに突然だった。
聞いた瞬間、どうして?と言う驚きとともに、また時間のストップウォッチが押された。

おっとりとしていて目から鼻に抜ける賢さはなかったけれど、性格が良くてなにより美人だった、ひめちゃん。
名前のとおり、アタチお姫さまなんだから!
と、いつも優雅で綺麗だった。
握られることが大好きで、いつも手の中に入ってきて甘える、甘え上手な女の子。
早熟で、生まれて半年経つか経たないかで卵を産みはじめて、そんなに生き急がないでと心配させられたひめちゃん。
なぜかお目当ての彼にだけはいつも強気で、でも彼のことが大好きだったひめちゃん。
 
彼女に何があったのか、誰もわからない。
あんなに元気だったのに、突然ひめちゃんは私たちのいる世界から物理的に消えてしまった。

夜、帰宅して冷たくなった彼女の額を、何度も何度も撫でた。
悲しい離別の傷がやっとほんの少しかさぶたになってきた心に、また棘が刺さったように、痛い。

命あるもの
形あるものは
いつか全て無に帰すのだけれど
残されるものはいつも悲しい

血のように赤く染まった紅葉の根元に
彼女の小さな小さな亡骸を埋めて土に返した翌朝
陽だまりの中にぽつんと残された
主人を亡くした鳥かご

また、時間が止まった

静かな悲しみ
感情というものがなければこんなに辛くはないのに
ヒトは感情と言葉を手に入れたことで
進化してきた。
その因果を、深く想う。


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自由律俳句

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